経営の健全性・効率性について
平成27年度において、経常収支比率が類似団体平均値より低いものの100%を上回り、給水原価が類似団体平均値より約40円も低く、料金回収率が3年ぶりに100%を上回り、流動比率についても約950%となっていることから、収益性や支払能力に関する健全性については、昨年度に引き続き堅調に推移している。料金回収率については、100%を上回ったものの、給水収益の増収よりも費用の減少に伴い給水原価が下がったことに大きく起因するものであり、今後、人口減少等により給水収益が減収していく社会情勢において、料金回収率は悪化していくことが予測される。流動比率については、100%を大きく上回っているものの、現金残高と企業債残高がほぼ同額となっていることから、収益の減少及び資産の老朽化による設備投資の増加等に伴い増大する現金の流出を抑制することが課題となる。企業債残高対給水収益比率については、平成27年度より企業債約12億円の償還が開始したことにより企業債残高が減少し、前年度より23.38ポイントの低下となったが、今後、企業債を活用するときは、人口減少社会における将来世代への負担を十分に考慮する必要がある。一方、有収率は、直近5ヵ年において、平成25年度に類似団体平均値を下回ったものの、その他の年度においては、漏水調査に伴う適切な修繕業務等により上回っており、平成27年度は、前年度より0.11ポイント改善し、効率性の向上に努めている。施設利用率においては、認可変更に伴い平成27年度は、前年度より22.34ポイント増加しているが、水需要の減少に伴い今後減少していくことが予測され、既存施設の規模についての検討が必要である。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却比率について、平成27年度は、1年間の減価償却分が増加したことにより、前年度より1.61ポイント上昇しているが、依然として類似団体平均値より低い値となっている。また、管路経年化率において、拡張期の管路が経年化したことにより、平成27年度は前年度より7%上昇し、類似団体よりも高い値となった。一方、管路更新率は、平成27年度も類似団体より低い水準で推移しており、改善できていない状況となっている。今後も有形固定資産減価償却比率及び管路経年化は右肩上がりの傾向にあり、安定給水に資するためには管路の更新延長を伸ばす必要があるが、更新費用が大きくなり経営を圧迫することから、管径の見直しも検討しながら計画的な更新事業を行い、補助金等の活用及び費用の抑制を図りながら管路更新比率を上昇させることが重要となる。
全体総括
給水人口の減少、高齢化及び節水機器の向上により水需要が減少する厳しい社会情勢において、将来にわたり健全な経営を維持するために、人口減少及び節水型社会に適合した新たな料金制度を構築し、収益の確保を図っていく。施設利用率においても、水需要の減少に伴い低下していくことが予測され、適切な施設規模のあり方について、スペックダウン、ダウンサイジング及び広域化を含めた検討を行っていく。また、法定耐用年数を超える管路が今後も急増し、更新に要する設備投資が増加することが予測される。従って、経営戦略を早期に策定し、アセットマネジメントと共に活用し、安定給水に支障を来たさない固定資産の実使用年数を考慮した適切な設備投資を行うとともに補助金等も活用しながら健全な経営の確保に繋げる取組みを行っていく。