経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、平成26年度と比較し5.09ポイント下降した。類似団体平均や全国平均と比較しても、高い比率である。要因については、分母の増加と分子の減少によるもので、次のとおりである。分母では、経常費用のうち料金改定により受水費が減となったものの災害復旧工事が進んだことにより資産減耗費などで増となったため、18,671千円の増となった。分子では、経常収益のうち営業外収益において高料金対策補助金が減額になった一方で、災害復旧工事が進んだことにより長期前受金戻入が増となり5,177千円の増となった。営業収益では、給水収益が復旧復興事業の進捗に合わせ微増となった一方で、新規の住宅着工が減少したことにより検査手数料や加入金が減少したため7,367千円の減額となった。以上により、分子では、2,190千円の減となった。②累積欠損比率は、未処理欠損金が発生していないため算定されなかった。③流動比率は、平成26年度と比較し684.63ポイント下降し1056.9%となった。類似団体平均や全国平均と比較しても高い比率であり、その主な要因は、東日本大震災以後、災害復旧・復興事業により、単費を投じての建設事業(管路等の更新事業)を人員不足の関係から行うことができなかったことによるものである。④企業債残高対給水収益比率は、平成26年度と比較し4.41ポイント下降した。類似団体平均と比較した場合は、351.5ポイント低い。要因は、分母の給水収益が増加したものの、分子の企業債残高合計額では、新規の借入がないため着実に償還が進んでいるため比率が下降した。今後、人口減少が進み給水収益が減る中で、老朽施設等の更新に着手し、企業債を起こすことになった場合、比率の上昇は避けられない。⑤料金回収率は、平成26年度と比較し0.64ポイント上昇した。類似団体平均と比較した場合は、9.03ポイント低い。また、⑥給水原価は、平成26年度と比較し0.72円安価になっているが、類似団体平均と比較して100.55円高くなっている。これらの一因は、自己水源が無く100%受水であり受水費に占める資本費が高いためと考えられる。今後の料金設定においては、適切な料金収入の確保を検討したい。⑦施設利用率は、平成26年度と比較して0.01ポイント下降した。類似団体平均や全国平均と比較しても下回っている。現状の主な要因は、震災による人口の減少と給水設備が節水型になっているためと考えられる。⑧有収率は、平成26年度と比較し0.35ポイント上昇した。類似団体平均と比較した場合は、16.83ポイント高くなっており、十分収益に結びついていると考えられる。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は、類似団体平均値と比較して0.85ポイント高い。これは、本町の給水面積が13.19㎢と東北一小さな町であることで、上水道の普及が早かったため、法定耐用年数に近づいている老朽管などが多い。また、本町は、東日本大震災により甚大な被害を受けたため、災害復旧・復興事業が主な事業となっており、平成30年度には、終息が見込まれる。今後は、「アセットマネジメント」や「経営戦略」などを策定し、長寿命化や被害のなかった施設の耐震化などを進めたいと考えている。②管路経年化率は、類似団体平均値と比較して0.81ポイント低い。これは、東日本大震災において被害を受けた管路を災害復旧事業において更新したものがあったため類似団体と比較して低くなったと思われる。③管路更新率は、類似団体平均値と比較して0.97ポイント低い。老朽化の状況については、施設、管路ともに進んでいることは認識しており、「アセットマネジメント」や「経営戦略」などを策定し、施設の更新を進めたいと考えている。
全体総括
本水道事業の課題は、東日本大震災からの復旧・復興という大きなテーマがある一方で、他の事業所と同様に老朽施設の改修や管路の耐震化、国から求められている様々な計画等の策定など山積している。他方、住民からは水道料金の値下げなども求められている。本水道事業としては、「アセットマネジメント」や「経営戦略」を策定し、住民に対し丁寧に説明しながら、必要な改修計画を進めたいと考えている。