経営の健全性・効率性について
経常収支比率は黒字を示す100%を超えていますが、前年より約0.94%低い103.44%となり、過去5年の中で最も低い数値となりました。人口減による給水収益の減少と施設老朽化修繕等による経常費用増加によって、現状では次年度から欠損金が発生することもあり得る状況です。流動比率は100%を超え、短期的な支払能力に問題はありませんが、給水収益の減少は流動資産である現金の減少につながることもあり、今後資金不足に陥らないよう注意を払う必要があります。企業債残高対給水収益比率は212.71%と類似団体平均よりは大幅に料金収入に対する償還の負担が少ない状況です。企業債に頼らず適切な料金設定により運営してきたことが背景にあります。今後も企業債の発行を抑えつつ、建設改良積立金の増資を図り、適切な投資を行っていく必要があります。料金回収率は100%を辛うじて超えていますが、給水原価が過去5年で最大値の215.41円と二年連続で上昇しており、経費の抑制及び収益の増加に取り組まなければ、近い将来確実に100%を割り込むことが予想されます。施設利用率は類似団体平均より高い数値を保っています。有収率は前年まで低下傾向でしたが、27年度から配水管の漏水調査を行い、こまめな修繕等対策を行ってきた結果、24年度並みの77.09%まで回復しました。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は今年度も44.72%と類似団体平均に近い数値を示しており、法定耐用年数が近い資産が徐々に増加しています。管路経年化率は8.0%と大幅に上昇しました。法定耐用年数に達した資産が単年で大幅に増加したことが原因です。資産の適切な更新と除却を進め、安定した水の供給を維持していく必要があります。管路更新率は道路改良工事等に伴う敷設替えの増加によって、0.88%と前年より大幅に上昇しました。現状の管路更新は区画整理事業や道路改良工事に伴う敷設替えを中心に計画通り進められていますが、財源はこれらの事業に拠るところが大きいため、自主財源の状況を見極めながら、適切な投資計画に沿って管路を更新していかなければなりません。
全体総括
本決算時の経営状況は経常収支比率が100%を超過し、累積欠損金もなく、企業債にも頼らない健全な経営を維持していますが、給水原価の上昇と料金回収率の低下は歯止めがかからず、水の供給に対する経費の上昇や料金収入の減少がこのまま続けば、現在の経営状況を保つことは近い将来において困難になります。設備投資においても、限られた財源の中で老朽化した管路等施設の更新を進めているところですが、財政状況がひっ迫すれば更新も滞ることになり、結果として安定した水の供給に影響が出ないとも限りません。こうした状況を未然に防ぐため、料金体系の見直しを行い、安定した収入を確保し、経常経費の削減に努め、適切な設備投資を計画的に行い、永続的に安全な水を安定的に供給できるような経営を目指していかなければなりません。