五條市：簡易水道事業（法適用）

経営の健全性・効率性について

給水収益等の営業収入649,739千円に対し減価償却額を含む営業費用は698,526千円で、既に営業収支△48,787千円と大きく赤字であり、収入の不足が致命的である。結果、最終赤字にはならないものの経常収支の悪化に影響している。26年度完工の配水池関連減価償却が27年度から開始しており大きくのしかかってきているのが一因であるが、減価償却の増は現金支出を伴わないので流動比率の悪化は来していない。また、老朽管での漏水事故が頻発していることから、有収率が目立った改善をしておらず、消費者が必要とする以上の水をつくらねばならないため、浄水段階での過剰な動力費・薬品費の投入が強いられ、経費の低減を阻んでいる（なお、28年度上半期決算の暫定値では、88.80％となっており多少回復基調にはなってきている）。現在、市内の簡易水道事業を上水道事業に統合する過程であり、29年度に市直営7簡易水道事業と樫辻飲料供給施設、長野不動給水施設を統合するのを皮切りに、組合管理の事業や施設を含め34年度までに統合を完成させることになっている。経営範囲がより広域に及ぶため、安全で安心な良質の水道水を安定的に供給するには、さらなる健全性と効率性の追求と一層の経営努力が必要である。

老朽化の状況について

老朽化に十分対処しているとはいえない。収益的収支で十分な利益が残せないため、またその環境下で、収益改善に直結しない耐震補強を優先して無理に実施してきたため、資金が枯渇しており、耐震補強すら中断している。老朽管路の計画的更新も施工の進捗がない。そのための資金が準備できないのが現状である。管路更新が進まず漏水事故が頻発し、それゆえ有収率が下がり、あわせて修繕費をはじめとする浄水や配水の経費の軽減が進まず、収支悪化が改善しない悪循環にある。

全体総括

収益的収支を改善し更新資金を蓄えて、老朽管更新と漏水事故防止に資源を集中し、浄水コストと配水コストを軽減することが急務といえる。その上で既存取水浄水設備の延命でなく身の丈にあった新規投入と（施設利用率が平均以下ゆえ）ダウンサイジングを図ることが必要であると考える。料金収入をはじめとする収入面は営業赤字を解消する程度まで引き上げる必要があり、主因となる料金の改定覚悟が、いっそうの経費縮減を進めるとともに、並行して必要になる。28年度から料金等審議会を招集しており、経営を好転させるには一定規模の改定が望まれる。