経営の健全性・効率性について
過去5ヵ年において、類似団体平均値より給水原価が低く、料金回収率が100%を下回っている状況になっているものの、経常収支比率が100%を上回っており、流動比率も会計制度による企業債償還金等の計上により低下したものの800%を維持していることから、収益性や支払能力に関する健全性については、堅調に推移している。また、設備投資に係る主な財源を企業債ではなく負担金等により確保してきたことにより、固定費である企業債利息と減価償却費の発生の抑制に繋がっていることから、給水原価は類似団体平均値より大きく下回っており、県内において、最も安い水道料金制度を可能にしている要因となっている。しかし、料金回収率は、平成23年度に100%を上回ったものの、その他の年度においては下回り、給水収益以外の収益(工事分担金等)から補填し、利潤を上げていることから、水道料金の単価を見直す必要性が生じている。流動比率においても、100%を大きく上回っているものの、現金残高と企業債残高がほぼ同額となっており、今後、給水収益が減少し、設備投資が増加することが予測されることから、現金流出の抑制が課題となってくる。また、企業債残高対給水収益比率において、類似団体平均値より上回っているが、給水原価が類似団体平均値より約40円低く、料金回収率が約100%であることから、供給単価においても類似団体平均値より約40円低くなっていることが要因である。さらに、経常収支比率が100%を上回っているので、企業債残高が多すぎるものではないが、今後の借入額については十分な留意が必要である。一方、有収率は、平成25年度において、類似団体平均値を下回ったものの、その他の年度においては、漏水調査に伴う適切な修繕業務等により、類似団体平均値より上回っており、効率的な運営が確保できている。しかし、施設利用率においては、水需要の減少に伴い年々減少しており、また、類似団体平均値よりも下回っていることから、既存施設が過大傾向になってきている。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却比率が平成26年度に前年度より27.92ポイントも上昇したのは、平成26年度より会計制度が改正されたことにより、今まで減価償却の対象としていなかった固定資産についても減価償却を行うようになった為である。また、管路更新率において、平成22年度は、下水道事業に伴う配水管の更新事業が多く、更新率が高くなっているものの、平成23年度以降においては、類似団体平均値よりも低い水準で、ほぼ横ばいに推移している。一方、有形固定資産減価償却比率及び管路経年化比率が、類似団体平均値より下回っているものの、類似団体と同じく右肩上がりの傾向にあることから、安定給水に資するためには、今後、管径の見直しも検討しながら計画的な更新事業を行い、費用の抑制を図りながら管路更新比率を上昇させる必要がある。
全体総括
給水人口の減少、高齢化及び節水機器の向上による水需要の減少に伴い給水収益が減少することが予測され、料金回収率がより一層悪化することが懸念される。従って、将来にわたる健全な経営を確保するために、料金制度を見直し、人口減少及び節水型社会に適合した新たな料金制度の構築を図っていく。施設利用率においても、水需要の減少に伴い減少していくことが予測され、適切な施設規模のあり方について、スペックダウン及びダウンサイジング等を含めた検討を行っていく。また、法定耐用年数を超える管路が今後増加することに伴い、更新に要する設備投資も増加傾向になることが予測される。従って、アセットマネジメント等を利用し、安定給水を持続させながら、固定資産の実使用年数を考慮した適切な投資を行い、費用増加の抑制を図り、現金の流出を防ぎ、健全な経営の確保に繋げる取組みを行っていく。