大船渡市：簡易水道事業（法適用）

経営の健全性・効率性について

①経常収支比率過去５年間で、平成23年度のみ100％未満であった。主な要因は、東日本大震災（※以後、震災）の影響による使用水量の大幅減に伴う給水収益の減少と、給配水施設等の応急復旧による総費用の増加である。また、平成25年度７月分から水道料金を改定（値上げ）し給水収益が増加したことなどにより、震災前の水準を超過するに至っている。②累積欠損金比率累積欠損金は発生していない。③流動比率過去５年間、100％を上回っているが、平成26年度は、地方公営企業会計基準の見直しによって、企業債などの流動負債が増加したことによる減である。④企業債残高対給水収益比率給水収益の回復に伴い平成24年度以降は緩やかに減少しているものの、類似団体と比較しても、平成26年度で依然1.5倍程度の高値となっている。平成14年度から17年度の未給水地域解消の施設整備に伴う企業債残高等が要因である。⑤料金回収率平成23、24年度は、震災の影響による給水収益の減少に伴い100％を下回ったが、25年度の料金改定に伴い当該年度以降100％を上回っており、給水に係る費用が給水収益で賄われていることを示している。⑥給水原価平成23年度は、震災の影響による年間総有収水量減少のため200円を超過したが、次年度以降は類似団体と同等に推移している。⑦施設利用率平成23年度は、震災の影響により一日平均配水量が減少したため60％まで満たなかったが、それ以外の年度はほぼ70％で推移しており全国平均を上回っている。⑧有収率震災以前は、類似団体の平均値を超える率であったが、震災以降は、緩やかに回復はしているものの、漏水等により依然として低い水準で推移している。

老朽化の状況について

①有形固定資産減価償却率各年度、ほぼ一定の割合で緩やかに上昇している。平成26年度の状況では、類似団体の平均値を下回ってはいるものの、老朽化が着実に進んでいることを示している。②管路経年化率過去５年間いずれも類似団体の平均値を下回っており、管路の整備時期が平成14年度から平成18年度代に高いなど、いまだ耐用年数に達しない資産が比較的多いことが要因である。③管路更新率震災発生以降、管路の更新は、防災集団移転に伴う水道施設整備事業の実施などにより一定の成果となっているが、耐用年数を経過した管路が比較的少ないなど、更新の必要性が低調であることから、類似団体の平均値と比較し３分の１程度となっている。

全体総括

震災の影響により、給水収益が減少するなど、一時的に厳しい経営局面が生じたが、住宅や事業所等の再建や、料金改定などの効果により、経常収支比率では震災前の水準を超過する状況となっている。しかしながら、給水収益に対する企業債残高の割合は、類似団体との比較上、依然高い水準にあり、経営環境は厳しい状況にある。収益の確保には、経営の効率性を高めていく必要が求められ、有収率の向上が重要な課題となっている。漏水やメーター不感等の原因を特定するため、より効果的な対策を講じていく必要がある。老朽管等の施設の更新については、昭和40、50年代に布設した送配水管等が、今後、更新時期を迎えるため、経年化率のさらなる上昇が予測される。財源の裏付けのある更新計画を検討するとともに、耐震化を図りながら適切かつ効率的な更新事業の実施が求められる。