経営の健全性・効率性について
・当市の下水道事業は、昭和58年に事業開始し、令和2年度人口普及率は81.99%で整備途上にある。水洗化率は80.79%で、近年の整備区域拡大に伴う水洗化の進捗により、前年度に比べ向上した。・維持管理費は、下水道汚泥の再資源化、処理場の増改築による省エネルギー化等が効果を上げており、近年の整備区域の水洗化進捗によって料金収入は増加しているが、汚水処理原価、経費回収率等の指標は改善に至っていない。今後も未普及区域の汚水管渠整備を推進し、大口事業所を含めた接続勧奨を強化するとともに、経費抑制策を継続して、更なる経営改善を進める。・企業債は、事業初期の高利率の企業債の償還完了に伴い、償還額は平成27年度をピークに減少が続き、処理場増改築に係る借入等により企業債残高が増加、残高対事業規模比率が悪化したが、据置経過後の償還開始に伴って再度減少に転じている。償還額の平準化を図るため、特別措置債借入や、償還期間40年での借入を継続する。・施設利用率は、処理場増設によって平成28年度に大幅に低下したが、未普及区域での整備の進捗に伴って上昇傾向にある。余剰処理能力の活用策として、平成29年度からし尿・浄化槽汚泥の受入処理を行っており、受入処理に係る経費は一般会計から繰入れている。
老朽化の状況について
・処理場について、事業初期から稼働する水処理設備について令和元年度までに長寿命化計画に基づく改築更新工事を終えたが、令和2年度から現存設備のストックマネジメント計画策定に着手し、効率的な改築更新を検討している。・汚水管渠について、事業初期に整備した汚水幹線等が30年を経過したが、平成26年度実施の調査においては改修を要する劣化は確認されていないが、マンホール破損等による小規模修繕等は増加傾向にある。・管渠改善率は、汚水管渠に大規模な改築更新行っていないため低率だが、雨水施設を含めた今後の改築更新需要を把握し、予防保全的な改築更新を計画する必要がある。
全体総括
・公共下水道の整備途上にあるため、汚水処理費(分流式下水道等に要する経費等の汚水公費負担分を除く)のうち資本費が61.8%を占める高資本費状態にあるが、企業債償還額の減少と、未普及区域の年次的な解消と大口事業所の接続による有収水量・料金収入の増加に伴い、収益的収支比率等の指標は改善傾向にある。・令和5年度の地方公営企業法適用に向けた移行作業を進めて資産管理や会計処理の適正化を図るとともに、ストックマネジメント計画を踏まえた長期的な収支計画に基づいた投資計画策定と、適正な使用料収入を確保する料金改定の検討など、経営の健全性と持続可能性を担保する取組を進める必要がある。