経営の健全性・効率性について
本町の下水道事業会計は、平成30年4月から地方公営企業法を適用し財政健全化に向けて取り組んでいるが、高水準で推移する企業債元利償還金や流域下水道維持管理負担金が高額なことも影響し、経営環境は非常に厳しい状況にある。使用料収入や一般会計繰入金等の収益で維持管理費や支払利息等の費用をどの程度賄えているかを表す①経常収支比率は99.93%と全国・類似団体平均値を下回っている。特に、皮革汚水前処理場に係る収支は赤字であり、一般会計繰入金に依存してもなお欠損金が発生する状況で、営業収益に対する②累積欠損金比率は32.46%となっている。また、短期的な債務に対する支払能力を表す③流動比率も58.75%と保有する流動資産(現金)の少なさから健全な水準にほど遠く、④企業債残高対事業規模比率も847.63%と全国・類似団体と比較して企業債残高の多さが際立っているが減少傾向にあるため、発行額の抑制に努め、改善を図る必要がある。人口動態等を反映して使用料収入・有収水量が伸び悩み、コスト負担の高さを主な原因とする⑤経費回収率の低さと⑥汚水処理原価の高さについて、収益面・費用面の双方から見直しに取り組まなければならない。⑧水洗化率については、97.28%と全国・類似団体平均を上回っているが、未接続世帯への個別訪問や啓発文書の送付など粘り強い接続勧奨に取り組んでいく。
老朽化の状況について
一部の下水道管が布設後34年を迎えたが、大部分の管路は耐用年数(50年)の面で問題の無い状況にある。現在は、供用開始から10年以上が経過した汚水管の洗浄や、重要な幹線管渠のカメラ調査を実施するなど適正な維持管理に努めており、今後も下水管の機能(流化能力)を確保し、管閉塞等の事故を未然に防止するため、継続的に取り組んでいく。一方、処理区域内に設置しているマンホールポンプが耐用年数に達したため、今後はポンプ本体について、老朽化の状況に応じて更新を行う予定である。また、皮革前処理場においては、生汚泥搬送による処理方式への変更により、熱処理設備(ボイラー、地下タンク等)の大規模な設備更新は回避したものの、未更新の機械・電気設備の老朽化が進んでいるため、計画的な修繕・工事とその財源確保が今後の課題である。
全体総括
汚水管渠の大量更新期の到来に備え、将来にわたり安定的に事業を運営するための財源確保が必要であるが、企業債元利償還金や皮革排水処理経費、流域下水道事業にかかる負担金など固定的・義務的経費が大半を占める一方、使用料収入が低迷し、一般会計繰入金に依存する厳しい財政状況が続いている。今後は、町内の浸水危険箇所の解消に向けた雨水対策事業への取り組みが急務となっており、早期に工事を実施する必要があるが、投資経費の平準化とともに収益環境の改善に向けた使用料改定の検討と経費の節減に取り組む必要がある。また、H30策定のストックマネジメント計画による設備更新や将来の管路更新を見据えた経営戦略の見直しに取り組み、使用料改定を含む経営資源の確保と基盤強化など財政マネジメントの向上を図り、今後の健全経営につなげていく。