経営の健全性・効率性について
本町では、長年の懸案事項であった水量不足や水道未普及地区の解消を目的に、町内に点在していた13箇所の簡易水道事業のうち、近接する10箇所の簡易水道事業を統合した。また、平成19年4月より、大阪広域水道企業団水を新たな水源とする上水道事業として給水した。さらに、平成28年度には、残る3箇所の簡易水道を統合し、平成29年度からは町域一水道として現在に至る。経営の健全性をみると、平成13年度からの統合簡易水道施設整備事業に伴う減価償却費や、企業債利子が増加していること、また、地勢上の制約から数多くの水道施設が点在し、非効率な送配水を余儀なくされ、動力費等の維持管理費用がかさんでいることから、給水原価が非常に高額なものとなっている。とりわけ企業債残高対給水収益比率の高さが示すように、大規模投資を行ったことに関連する資本費については、経常費用中の約6割を占める。このため、経営の改善策として公的補償金免除繰上償還の制度を利用し、企業債の利子負担軽減に努めたが、その効果は限定的なものにとどまった。経常収支比率・料金回収率では、経常収支比率は年度ごとのバラつきが見られ、100%以上となった年度においても類似団体平均値を下回る。また、本町では、一般会計からの繰入基準内補助が経常収益の約1/4を占め、給水収益以外の収益に依存する構造となっている。このため、経常収支比率が100%以上の年度であっても、料金回収率は100%を下回る状況にある。令和元年度では、収益における給水納付金の増が、支出においては、修繕工事費など費用の減があったことにより、5,064千円の純利益を計上し、累積欠損金比率が平成30年度から若干好転した。一方、効率性に関し、施設利用率は、平成28年度までは、類似団体平均値を下回っていたものの、平成29年度以降に類似団体平均値を上回ることとなったのは、簡易水道統合の認可変更に合わせ、施設能力の見直しを行ったことが要因である。また、有収率は、前年度との比較において約3.8ポイント上昇したが、これは平成30年度においては、集中豪雨や台風等に伴う漏水が多発したことに起因する。
老朽化の状況について
統合簡易水道施設整備事業など、新規大規模投資による施設更新が進んでいることから、有形固定資産減価償却率は、類似団体平均値と比べ、低い数値となっている。しかしながら、管路経年化率は、平成26年度までは低い数値となっていたが、旧簡易水道時代に布設した水道管で、布設後40年を経過した水道管の延長が、平成27年度を境に増大している。管路更新率については、平成30年度においては類似団体平均値と同率であるが、令和元年度では下水道関連工事に伴う布設替工事の減もあり、率も大きく落ち込む結果となった。今後とも資金面、技術職不足により思うように率を上げることが出来ないのが実情である。統合簡易水道施設整備事業で、新規取得・老朽化の更新を行った施設は、給水区域全体に及ぶものではなく、有収率の低さを見てもわかるように、旧簡易水道時代の管路の経年化が進んでいる。
全体総括
経営の健全性・効率性について、統合簡易水道施設整備事業に伴う大規模投資での資本費や地勢上の制約に伴う給水効率の悪さが、高額な給水原価の主要因となっている。特に経常費用の中でも、減価償却費及び支払利子の占める割合が非常に大きいことから、水道施設の更新に関しては、給水人口や給水需要の減に直面している状況を踏まえ、施設のダウンサイジング等の検討を行っていく。また、更新再投資額を抑制し、新たに発生する資本費の縮減に努める。加えて、料金回収率が低いことからもわかるように、井戸水から水道水へのシフトを促す等の料金収益の増収策を検討していく。老朽化の状況に関し、管路更新率について、資金・マンパワー面での課題も有り、未だ低い水準である。特に、旧簡易水道時代の経年管延長が今後も増大し、管路経年化率は上昇していく見込みである。可能な限り計画的な老朽管の更新を行いながら、段階的な比率の向上に努める。なお、平成28年度に策定した経営戦略を平成30年度に改定し、令和6年度には、大阪広域水道企業団との統合を予定している。