経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は105.8%で、経常収益が対前年度比で8.4%増に対し経常費用が対前年度比8.3%の増で0.1ポイント増となった。経常収益増の主な要因は、給水収益が1.1%増となったものである。給水収益増加の要因は、一部の施設における需要増によるものである。営業外収益については対前年度比で30.3%増で、長期前受金戻入、簡易水道事業統合経費の一部を特別会計から受け入れた雑収益の増が主な要因である。一方、経常費用増の主な要因は委託料、減価償却費、固定資産除却費の増である。③流動比率は対前年度比で、43.16ポイント減となった。これは平成27年度からの繰越工事の大幅な増加によるもので、投資活動における資金の減少が大きく、当年度末の支払能力は類似団体及び全国平均に比べると短期の支払能力で劣っている。④企業債残高対給水収益比率は減少傾向にあるが、類似団体よりやや高い。減少傾向にあるのは企業債残高も減っているが、給水収益も減少しているだけで、必要な投資を先送りしており、適正な料金水準になっていないことが言える。⑤料金回収率は依然100%未満となっており、給水収益のみで費用を賄うことはできていない。一般会計からの繰入に依存しており、全国平均及び類似団体平均に比べると10ポイント以上低い。、給水収益が減少傾向にあるにもかかわらず、費用は横ばいであるため、費用に見合う適正な料金設定とは言えない状況である。⑥給水原価は対前年度比で8.3円上昇したが、主な要因は有収水量の減少、委託料、減価償却費、固定資産除却費の増であり、類似団体と比較して100円以上高い。今後簡易水道事業を統合したことで、さらに高くなる。⑦施設利用率は対前年度比で微増となったが、過去5年間で大きな変動はない。今後も人口減少ととも下降ぎみとなる。⑧有収率については、毎年度有収率が低い地域において漏水調査と修繕を行っているが、対前年度比で約0.12ポイント低下した。依然老朽管の漏水が多くあり、引き続き有収率の低い地域の漏水調査を実施して、さらなる改善が必要である。
老朽化の状況について
①H28はH27に比べて微増したものの、類似団体平均値、全国平均値を下回っている。②経年化率はH28で約14%となっている。H27においては約22%であったが、これは布設年度不明管の多くを経年管と取り扱うこととしたためであり、管路システム整備において布設年度不明管の布設年度を特定したことで精度を高め、その結果経年管延長が減少した。今後計画的な更新をしなければ、これらが老朽管となり老朽化率が上昇していく。③H28における管路の更新実績は0.66%で、対前年度比で上昇したが、これは前年度からの支障移転工事が多かったためである。依然として老朽化を抑えるために必要な更新率には程遠い状況にある。今後はH28年度末に策定した管路更新計画の精度を高め、財政規模に見合った更新を行う必要がある。
全体総括
本会計の経常収支比率は毎年100%を超えているため、毎年度当期純利益を計上し、未処分利益剰余金も年々増加している。しかし、その当期純利益の額は年々減少傾向にある。また、当期純利益は計上しているものの、資金収支では業務活動における資金増で投資・財務活動における必要資金を賄えておらず、毎期末における現金預金残高は減少し、損益勘定留保資金が数年後には枯渇し、未処分利益剰余金を取り崩さなければならない事態になることが懸念される。さらに、簡易水道事業統合による会計統合により、本会計の経営はさらに厳しい運営を余儀なくされる。料金回収率が100%を切っている中、簡易水道事業を統合すれば、投資に回すだけの資金を得ることは困難であり、数年後には適正な料金への見直しを視野に入れていかなくてはならない。また、前年度末において策定した管路更新計画の精度を高め、必要な更新需要を早急に把握し、適正規模の投資活動を行っていかなくてはならない。この投資活動を着実に実行していくには財源を確保する必要がある。よって、統合後の経営状況を見極め、適正な料金への見直しと企業債の借入れ、補助事業の導入と繰入金の確保等を行い、それらを総合的に判断して健全な経営を行う必要がある。