経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は103.4%で、対前年度比で2.4%減となった。簡易水道事業統合に伴い経常収益が対前年度比で23.4%増に対し、経常費用が対前年度比26.3%の増となったことが要因である。経常収益増の主な要因は、給水収益が11.9%増となったものである。これは簡水統合に伴う会計統合による増、給水人口減少にもかかわらず、一部の施設における需要増によるものである。営業外収益についても対前年度比で49.6%増で、簡水統合により、長期前受金戻入、他会計補助金の増が主な要因である。経常費用の増においては、職員給与費、修繕費、減価償却費、支払利息が増加したが、これらについても簡水統合が主な要因となっている。③流動比率は対前年度比で、41.2ポイント減となった。簡水統合により法非適用簡水会計から平成29年度当初において約1億5千8百万円の現金預金を引継いだが、建設改良費の大幅な増加に伴う未払金の増により流動比率が多く降下した。当年度末の支払能力は類似団体及び全国平均に比べると短期の支払能力では劣っている。④減少傾向にあった企業債残高対給水収益比率が高くなった要因は、元々料金収入の少ない法非適用簡水から約10億7千万円の企業債を引継いだことで企業債残高が増加したためである。全国平均及び類似団体平均より大きく上回っているため、企業債残高に比べて適性な料金水準となっていないことが言える。今後はさらに給水収益も減少していくため、適正規模の投資を行うことで過度の借入をせずに企業債残高を減らしていく必要がある。⑤料金回収率は対前年度比で約4.7ポイント減少した。これは元々一般会計からの繰入金に依存して経営し、料金回収率が極端に低い法非適用簡水を統合したことにある。統合前の全国平均及び類似団体平均よりさらに低くなった。給水収益は減少傾向にあるにもかかわらず、費用に見合う適正な料金設定であるとは言えず、一般会計からの繰入に依存する傾向がさらに高くなっている。⑥給水原価は対前年度比で約14円上昇し、簡易水道事業統合によるものが大きく影響している。統合前の旧法非適用簡水の給水原価は極端に高いものとなっており、さらに統合後に新たに発生した減価償却費の増が給水原価を押し上げた。ただし、今後は有収水量の減少はあるものの、経常費用の約30%を占める受水費の減少が見込まれるが、過剰な投資による減価償却費の増を抑え、経常費用の増加を抑えていく必要がある。⑦施設利用率は対前年度比で過去5年間で大きな変動はなかったが、稼働率の高い法非適用簡水統合により利用率が高くなった。しかし、今後は統合後の旧法非適用簡水区域の給水人口が減少していくため、ダウンサイジングや施設の統廃合等を検討していく必要がある。⑧有収率については、毎年度有収率が低い地域において漏水調査と修繕を行っているが、下降傾向にある。さらに、有収率が低かった法非適用簡水区域を統合したことで、対前年度比で約0.6ポイント低下した。依然老朽管の漏水が多くあり、引き続き有収率の低い地域の漏水調査を実施して、さらなる改善が必要である。
老朽化の状況について
①H29はH28に比べてわずかに上昇したが、簡易水道事業統合による影響はなかった。これは統合した旧法非適用簡易水道事業から引継いだ有形固定資産が比較的あたらしいものであったことが要因であり、類似団体平均値、全国平均値を下回っている。経年化率を考慮すれば耐用年数に近い資産を抱える割合は低い。しかし、統合した旧簡易水道事業は多くの管路以外の資産を抱えているために、今後急激に上昇することが予想されるため、管路以外の資産の更新も計画的に行っていく必要がある。②管路経年化率はH29で約12%となっており、比較的新しい管路が多い旧簡易水道事業の統合したことが、経年化率が低下の要因である。しかし、今後は老朽化率は上昇していくため、経年化率をできるだけ抑えるためには、耐用年数を超過したものから更新していく必要がある。しかし、現状は耐用年数に達していないものにおいて優先的に更新していく管路があるため、収支財政見通しを踏まえて適正規模の投資計画に基づいて管路の更新を行っていく必要がある。③H29における管路の更新実績は対前年度比で0.3ポイント上昇したが、前年度からの支障移転工事及び単独工事による布設替が増加したためである。依然として老朽化を抑えるために必要な更新率になっていない状況にある。しかし、老朽化率を抑えるためには多額の資金が必要であり、投資計画をさらに精査した上で財政規模に見合った更新を行っていく必要がある。
全体総括
本市の経常収支比率は100%を超え、未処分利益剰余金も増加している。しかし、資金収支においては業務活動における資金増で投資・財務活動に必要な資金は賄えておらず、期末における現金預金残高は年々減少している。平成29年度において行った簡水統合により、元々給水人口が少なく採算性のない事業を経営統合したことにより、給水原価を押し上げたことで料金回収率は下がり統合後の経営に影響を及ぼしている。統合後の収支見通しは、給水収益と基準内繰出縮小による収入は減少、経常費用の30%を占める受水費の軽減は見込まれるものの、投資活動へ十分に回せるだけの安定的な経営状況ではない。安定的な収入を得て必要な施設更新をするために適正な料金水準への見直しが必要である。一方、保有する有形固定資産の大半をしめる管路については、年々老朽化が進み計画的な更新が必要であるが、投資計画を今後も逐次見直し、収支見通しを考慮した上で適正規模な投資を行っていく。この投資計画を着実に実行していくには多大な財源を確保する必要があるが、一昨年策定した経営戦略における収支計画を見直し、料金収入と企業債借入、補助事業の導入、繰入金確保等の財政計画を総合的に見通した上で、健全な経営を行う必要がある。