五條市：簡易水道事業（法適用）

経営の健全性・効率性について

給水収益等の営業収入652,738千円に対し減価償却額を含む営業費用は740,800千円で、既に営業収支△88,062千円と大きく赤字である。老朽管整備計画策定・電気計装設備修理・簡易水道事業統合に伴う変更認可申請委託などの特殊要因はあるが、収入の不足が致命的である。結果、最終赤字にはならないものの経常収支の悪化に影響している。また、老朽管での漏水事故が頻発していることから、有収率が目立った改善をしていない。類似団体平均より良いとはいえ、消費者が必要とする以上の水をつくらねばならないことで、浄水段階での過剰な動力費・薬品費の投入が強いられ、経費の低減を阻んでいる。老朽管整備計画の策定が完了したことから、石綿セメント管や鋳鉄管の布設替にようやく本腰を入れ始めたところである。市内の簡易水道事業を上水道事業に統合する過程であり、29年度から市直営7簡易水道事業と樫辻飲料供給施設、長野不動給水施設を統合した。以後、他の組合管理の事業や施設を含め34年度までに統合を完成させることになっている。経営範囲がより広域に及ぶが、整備中のため起債が続き、企業債残高は当分の間増え続ける。安全で安心な良質の水道水を安定的に供給するには、さらなる健全性と効率性の追求と一層の経営努力が必要である。

老朽化の状況について

老朽化に十分対処しているとはいえない。収益的収支で十分な利益が残せないため、またその環境下で、収益改善に直結しない耐震補強を優先して無理に実施してきたため、資金が枯渇しており、耐震補強すら中断している。老朽管路の計画的更新に臨みようやく整備計画を策定したところであり、施工はまだこれからである。そのための資金として、本市では約20年ぶりとなる料金改定（平均19%）を可決いただき、30年度以降の増収を見込んでいる。類似団体に比べても管路更新が進んでおらず、漏水事故が頻発し、有収率低下につながり、あわせて修繕費をはじめとする浄水や配水の経費の軽減が進まず、収支悪化が改善しないという悪循環になんとかして終止符を打たねばならない。

全体総括

収益的収支を改善し更新資金を蓄えて、老朽管更新と漏水事故防止に資源を集中し、浄水コストと配水コストを軽減することが急務といえる。その上で既存取水浄水設備の延命でなく身の丈にあった新規投入と（施設利用率が平均以下ゆえ）ダウンサイジングを図ることが必要であると考える。料金収入をはじめとする収入面は営業赤字を解消する程度まで引き上げる必要があるが、29年度からは簡易水道事業を統合しているため、自主財源での採算はより厳しくなっていることから、いっそうの経費縮減を進める必要がある。