経営の健全性・効率性について
平成28年度は、施設の老朽化に伴う修繕費が増加したことや、小高区の避難指示解除に向けた工事等を実施したことなどから営業費用が増加した。一方で小高区の使用料徴収に猶予期間を設けていることから収入は増加していないため、前年度と比して経常収支比率は減少している。水準としては100%を上回っており、概ね健全な経営状況と言える。経費回収率は100%に近い水準ではあるが、汚水処理に係る費用の増加額が、使用料収入の推移に対して大きくなってきていることが推測される。今後は老朽化に対応するための費用が更に増加し、人口減少により使用料収入は減少することが予想されるため、将来的な財政バランスを見通して経営計画を更新していく必要がある。東日本大震災の影響によって累積欠損比率が大きく増加した経過があるが、平成26年度以降は純利益を計上している。今後は小高区の避難指示解除による使用料収入の回復が見込まれるが、東京電力の賠償金による特別利益は減少していくため、健全な財政状況を保てるよう経費縮減に努める。
老朽化の状況について
供用開始の早かった原町区において管渠資産が標準耐用年数を経過しはじめている。長寿命化計画に基づき、優先順位の高い区域から段階的に更新工事を実施する。今年度に管渠更生工事の実施設計が完了したため、平成29年度より工事を実施する。その他、今年度の改善内容は過年発生災害に係る管渠復旧工事と、管渠止水工事によるものである。
全体総括
当市の公共下水道事業は、東日本大震災と原発事故の影響により、施設の大規模な処分、多額の災害復旧事業、使用料の収入減少等様々な事業負担を強いられたことから、一時的に財政状況が悪化した。直近数年間は経営成績が回復の傾向を示しているが、災害復旧事業がほぼ完了し、小高区の避難指示が解除されたことから、次年度以降が平常の経営状況という想定となる。将来の投資計画に対応可能な財源を確保し、事業を安定的且つ継続的に実施していくために、引き続き経営状況が改善するよう努める。