経営の健全性・効率性について
東日本大震災以降、それまで80%を超えていた有収率が一気に低下し、平成25年度には70.15%まで落ち込みましたが、平成23年度から広範囲に取り組んできた漏水調査と漏水修繕の効果が表れ、有収率は徐々に上昇してきており、70%台後半の数値になっています。この効果により経常費用の抑制が図られ、経常経費比率の改善されてきていましたが、平成30年度以降、料金収入等の落込みにより経常経費比率が低下してきています。企業会計の内部留保資金は約2.9億円であり、平成30年度から白河広域市町村圏整備組合に支払っているの負担金についても十分対応できる水準にありますが、人口減少や節水意識の向上等により給水収益の増加が今後見込めないため流動性比率に注意しながら慎重な経営に努めなければならない状況にあります。企業債については、元金償還額が約1億2千万円、借入額は約1億5千万円となっております。なお、類似団体と比較して企業債残高給水収益比率が高いのは、平成17年度より白河広域市町村圏整備組合からの水道用水受水のための施設整備に約18億円を投資したことによるものであり、今後さらに重要給配水施設の更新事業が予定されているため、当面改善が見込めない状況にあります。令和元年度の1日最大配水量は4,908㎥、1日平均配水量は4,407㎥ですが、計画配水量は1日当たり8,300㎥となっており、今後、水源の休止や浄水場の廃止等配水量の推移を見ながら検討することで効率的な事業運営に努め、経営の健全性を担保していかなければなりません。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は年々上昇しており、施設の老朽化が進行していますが、財政的に定期更新が出来る状況ではないため、施設のメンテナンスに努め効果的な維持管理を図りながら、重要給配水施設の計画的な施設更新に取り組むことにしています。平成28年度までの管路更新率は、類似団体自体の指標が低い状況であるにもかかわらず、さらに低い指標となっており、更新事業の立ち遅れが明確になっており、更新の遅れが有収率の低下につながっていました。平成29年度より重要給配水施設の更新に取り組んでおり、令和元年度は管路更新率約1.38%になっています。管路経年化率については、総延長約112km中、耐用年数を経過している管路延長が約29.7㎞ですが、うち、石綿セメント管の未更新延長が約7.3kmあり、引き続き管路更新事業に取り組まなければならない状況にあります。
全体総括
白河広域市町村圏整備組合からの受水のための投資、新たな受水費の負担及び東日本大震災で受けた管路施設等のダメージによる漏水の多発や不明水の増加が有収率の低下を招き、これらが複合的に影響して給水原価や料金回収率の数値を悪くしています。また、平成17年度からの受水にあたり多額の投資を要したことで既存施設の更新が遅れているにもかかわらず、経常収支比率及び流動比率の数値が安定しているのは、受水施設の一部移管に伴う負担金約3.1億円を支払うために資金の内部留保に努めたことと、この間施設更新事業を抑制してきたことによるものであります。この負担金の支払いが今後6年間続くことも含め、水道ビジョン(経営戦略)の改定やアセットマネジメントを策定に取組み、統廃合を見据えた計画的な施設更新を進め、安心・安全な水道事業の運営に努めます。