経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は105.1%となり、対前年度比では1.7ポイント改善した。営業収益の主たる収入である給水収益は、給水人口減少により1.2%減となったが、営業外収益で4.9%増となり、経常収益では1.1%増となった。営業外収益増の要因は一般会計からの補助金で、旧簡易水道区域の減価償却費補填によるものである。一方、営業費用は0.56%の減で、主に固定資産除却費が前年度比で減少したことによるものである。その結果、経常損益では収益の増と費用の減により経営は改善したが、全国平均及び類似団体で比較すると低い数値となっている。なお、災害による多額の固定資産除却費は特別損失で計上したものである。③流動比率は対前年度比で、23.9ポイント減となった。建設改良費の大幅な増加に伴う未払金の増、経営方針変更により新規の企業債借入の際の元金償還の据え置き期間を廃止したことによる1年未満の償還金の増により流動比率が降下した。当年度末の支払能力は類似団体及び全国平均ともに短期の支払能力で劣っている傾向にあり、毎年の現金預金の減少傾向にある。④企業債残高対給水収益比率は簡易水道統合により高くなっており、全国平均及び類似団体平均より大きく上回っている。企業債残高に比べて適性な料金水準となっていないことが言える。今後はさらに給水収益も減少していくため、当面は過度の借入をせずに企業債残高を減らしていき、料金改定を視野に経営計画を立て比率を抑えていく必要がある。⑤料金回収率は対前年度比で約2.2ポイント減少した。料金回収率が簡水統合してから大きく減少しているが、とくに料金回収率が極端に低かった桜江区域の簡水を統合したことにある。給水収益は減少傾向にあるにもかかわらず、元々給水人口が少なく採算性のない簡易水道を統合したためであり、料金改定を行わない限り料金回収率は改善することはなく、今後も繰入依存体質の経営は今後も続く。⑥給水原価は対前年度比で約10円上昇し、統合前の旧法非適用簡水の給水原価は極端に高いものとなっている。給水原価上昇の要因は有収水量の減少が主な要因である。また、費用においては職員給与費の増が給水原価を押し上げた。今後は有収水量の減少が続くが、経常費用の約30%を占める受水費の減少が見込まれ、多少の改善は見込まれるが、その傾向は長くは続かないと予想される。⑦施設利用率は給水人口減少により微減となった。今後は給水人口が減少していくため、管路のダウンサイジング及び施設の統廃合等を検討していく必要がある。⑧有収率については、対前年度比で約1.4ポイント改善した。これは、これまで漏水調査を行ってこなかった旧簡易水道事業の桜江区域の調査を実施し漏水修繕を行ったことで、有収率が改善したものである。しかし、全国平均より低い数値となっており、依然老朽管の漏水が多くあることから、今後も有収率の低い地域の漏水調査による修繕の実施により改善を行っていく必要がある。
老朽化の状況について
①H30は対前年度比でわずかに上昇した。類似団体平均値、全国平均値を下回っているが、5年間の平均上昇率は年間0.7ポイント上昇しており、全国平均の上昇率を上回っている。全国平均、類似団体より数値が低いのは、統合した旧桜江簡易水道区域の資産が比較的新しい資産であり、かつH30において浄水施設が浸水被害により全破損により資産を更新したことによるものである。②管路経年化率はH30は約12%となっており、対前年度比では上昇しなかった。これは、H30において、経年21年以上の管路の更新を比較的多く実施したものである。今後、経年化率をできるだけ抑えるためには、耐用年数超過の老朽管や比較的古い経年管から更新していく必要がある。しかし、現状は優先的に耐震化が必要な基幹管路の更新が多数あるため、古い管からの更新は今後もできないと想定される。管路経年率を抑制するため、優先順位と経過年数を踏まえ計画的な更新を行っていく必要がある。③H30における管路の更新実績は対前年度比で0.13ポイント上昇し例年以上の更新を行った。その結果、全国平均及び類似団体との比較においては大きく上回り、老朽化率の抑制につながった。例年以上に公共事業等における支障移転工事による管路更新延長が多かったことが要因である。今後も投資計画を精査した上で財政規模に見合った管路及び施設更新を行っていく。
全体総括
本市の経常収支比率は105%で、毎年未処分利益剰余金も増加傾向にあったが、H30は災害による多額の特別損失により当期純損失が発生し、未処分利益剰余金は減少した。また、資金収支において業務活動における資金増で投資・財務活動に必要な資金は賄えておらず、期末における現金預金残高は年々減少している。この減少傾向は簡水統合以来続いており今後もその傾向は続く。さらに元々給水人口が少なく採算性のない事業を経営統合したことで給水原価を押し上げ、料金回収率は、受水費が低下する令和2年は一時的に回収率が上がるがその後は低下する一方である。今後の収支見通しは、給水収益と基準内繰出縮小による収入は減少、経常費用の30%を占める受水費の軽減により一時的な経営改善と現金預金の確保は見込まれるものの、投資活動へ十分に回せるだけの安定的な経営と資金確保は長期間見込めない。安定的な収入を得て必要な施設更新をするために適正な料金水準への見直しが必要である。一方、保有する有形固定資産の大半をしめる管路については、年々老朽化が進み計画的な更新が必要であるが、投資計画を今後も逐次見直し、収支見通しを考慮した上で適正規模な投資を行っていく。この投資計画を着実に実行していくには多大な財源を確保する必要がある。まずは収支計画を常に見直し料金改定に必要な数値等を常に把握しておく必要がある。さらに財源確保のための財政計画を総合的に見通した上で、健全な経営を行う必要がある。