経営の健全性・効率性について
当事業は、一般会計からの繰入れや長期前受金戻入など、使用料以外の収入のほか、公共下水道等他の事業と一体で経営しなければ、健全性が保てない状況である。総収益のうち下水道使用料の占める割合は32%で、繰出基準に基づく一般会計繰入金など使用料以外の収入を含めても費用を賄えていないが、経常費用の増加により①経常収支比率が2.4pt悪化した。一方、損失は繰越利益剰余金と相殺し、②累積欠損金は発生しなかった。③流動比率が29pt低下したのは、前年度の流動資産に当年度へ繰越した事業の前払金が含まれているためで、これを除くと前年度8ptとなり、当年度と同程度である。④企業債残高対事業規模比率は、類似団体の平均値を下回っており、企業債残高が減少したことから昨年度に比べ低下した。⑤経費回収率・⑥汚水処理原価は、減価償却費や支払利息等の費用のうち、一般会計繰入金など使用料以外の収入を充てる費用を除いて算定したものである。費用が増加したことに伴い、経費回収率は低下し、汚水処理原価は増加した。⑦施設利用率が低い要因として、施設規模が過大となっている可能性があるため、施設の統廃合等を検討する必要がある。H26年度に面整備が概成しており、⑧水洗化率の大幅な上昇は見込めない状況であるが、接続勧奨や排水設備の戸別調査を行い、未接続世帯の接続促進を引き続き行う。
老朽化の状況について
当事業は、平成26年度に面整備事業が完了している。償却資産の大半を占める管渠は現時点で老朽化の度合は低いが、処理場の機器等については、法定耐用年数を超えるものが相当数あるため、早急に老朽化の状況調査と更新計画の策定が必要である。①有形固定資産減価償却率は、類似団体に比べ低い状況であるが、年々上昇している。また、今後も上昇するものと見込んでいる。②管渠老朽化率は、法定耐用年数に達したものがないことから0%となっている。
全体総括
公共下水道のほか、集落排水事業や公設浄化槽事業を含めた下水道事業全体として、概ね健全な経営であり、今後も、上下水道事業経営の指針となる経営計画にある施策に関し、毎年度、PDCAサイクルによる進行管理を通じて事業全般の実効性を高めていく。下水道事業では、この計画に基づき、接続促進等による収益確保、農業集落排水施設の公共下水道接続等による費用縮減や人材育成による経営基盤の整備をするとともに、適切な修繕・更新による施設設備の長寿命化や維持運用に努めていく。また、令和10年代に到来する下水道施設管渠の更新改築期を見据えて、従来の普及整備、日常管理のための計画から、更新改築計画と料金、収支見通し、事業担当の人材育成を含む「事業管理計画」へ下水道事業を再構築を図ることで、将来にわたり事業を健全に運営できる体制を構築していく。