経営の健全性・効率性について
平成27年度から地方公営企業法の財務規定を適用したため、比較可能な前年度以前の数値はない。経常収支比率は100%を超えているが、経費回収率は100%を下回り、また汚水処理原価も類似団体と比較し高い水準にある。普及率が低く十分な有収水量が得られていないことが主な要因と考えられ、効率的な下水道整備により普及率を向上させるとともに、更なる経費節減に取り組み、また必要に応じて使用料の見直しも検討する必要がある。企業債残高対事業規模比率は、類似団体と比較し若干高い水準にあるが、今後、普及率の向上とともに使用料収入は増加し、適切な投資規模を保つことで企業債残高は減少するため、本数値は改善してゆく見込みである。施設利用率は、類似団体と比較し高い数値となっているが、当該数値は晴天時一日平均処理水量を晴天時現在処理能力で除して算出するものであり、処理能力が当市の終末処理場だけの数値であるのに対し、平均処理水量には流域下水道の数値も含んでいるため、比較分析においては注意する必要がある。なお、当市の終末処理場のみによる施設利用率は、平成27年度で58%となっている。流動比率は100%を下回り、類似団体と比較しても低い数値となっているが、1年以内に償還する建設企業債を除いた流動負債の額は流動資産の額を下回っており、支払能力に問題が生じている状況ではない。累積欠損金は生じておらず、累積欠損金比率は0%となっている。
老朽化の状況について
昭和26年に事業開始した一文字処理区の管渠老朽化が進んでおり、管渠老朽化率は類似団体を若干上回っている。すでに管路長寿命化計画を策定し、優先順位の高いものから順次改築更新を進めている。今後は、一文字処理区に加えて由宇処理区においても、長寿命化計画に従い管路改築更新を実施することとしている。なお、有形固定資産減価償却率が類似団体と比較して低い数値となっているが、当該数値は資産の減価償却累計額を取得価額で除した数値であり、法適用開始時における資産の取得価額は、当初取得価額から法適用開始時までの減価償却累計額相当額を控除した額となるため、当該数値の比較分析においては注意する必要がある。
全体総括
当市の公共下水道事業は、普及率が依然低いうえ一部処理区では施設の老朽化が進んでおり、新規整備と改築更新の両方を進めていかなければならないという厳しい経営環境にある。新規整備と改築更新のバランス及び優先順位を意識した効率的な投資を行い、普及率の向上と老朽化施設の更新を両立させ、また、継続的に経費の節減に取り組み汚水処理原価の低減と経費回収率の向上を図り、経営状況の改善に努める必要がある。