経営の健全性・効率性について
収益性については、平成22年度地方公営企業法適用以降、黒字決算を続けており、類似団体平均及び全国平均と比較しても順調な経営状況にあると考えます。これは、流域下水道への接続によるスケールメリットを享受していることや、諏訪湖浄化に対する住民理解の高さから、下水道接続への理解が得られたことに起因するものと考えられます。後段については、平成27年度時点の『水洗化率』が98.86%と類似団体平均及び全国平均を上回ることからも推測することができます。一方で、当市特有の軟弱地盤によって下水道建設費が高くなりがちであること、この財源を企業債の発行に依存したことにより、企業債残高対事業規模比率は毎年少しずつ減少してきているものの依然として高い数値となっており、平成27年度から類似団体平均及び全国平均を上回る結果となりました。これらに係る費用を要因として汚水処理原価も高止まりしているため、下水道建設事業内容・費用及び企業債の新規発行額の更なる精査が必要と考えます。流動比率は前年度比で若干数値が改善しましたが、収益は確保できているものの十分な資金が内部留保されていない状況に変わりがないため、100%まで改善されるのには暫く時間がかかると見込んでいます。
老朽化の状況について
施設の老朽化については、当市の下水道管の建設開始が昭和48年度からであること、かつ、保有する資産のほとんどが法定耐用年数50年の下水道管であることから、有形固定資産減価償却率、管渠老朽化率及び管渠改善率は類似団体平均及び全国平均を下回っています。ただし、当市の下水道は昭和50年代後半に建設のピークがあり、平成40年度には30年経過管渠が全体の約60%、40年経過管渠が約35%、50年経過管渠が約5%となる見込みで、下水道管の老朽化対策とその財源確保については近い将来の課題です。平成29年度にはストックマネジメントを実施予定であり、計画的かつ効率的な下水道管の改築更新を実施できるよう早急に準備を進めていく予定です。
全体総括
経営の健全性について、当面の収益性に大きな問題はないものの、資金の内部留保が十分ではない現状は、施設の改築更新需要の点から懸念材料となっています。これは、過去に発行した企業債が多額であり、その償還額が重くのしかかっていることに起因しています。平成22年度地方公営企業法適用後は企業債の新規発行を抑制、償還方法を元金均等返済を選択等、償還総額が小さくなるように努めているところですが、長期的な視点に立った財務体質の強化が必要であると考えます。老朽化については、平成22年度より国庫交付金を活用しながら計画的に老朽管の改築更新事業を進めています。今後は、平成27~28年度実施中である下水道台帳のデータ化によって既存資産のデータ分析が可能となることから、詳細な投資及び財源の将来予測を立て、これを基に老朽化対策を進めると共に健全な企業経営を行う必要があると考えます。