経営の健全性・効率性について
平成26年1月1日に使用料の改定を行ったが、施設維持管理費について、その大部分を一般会計からの他会計補助金で賄っている状況である。令和3年度より、財政部局との協議によって他会計補助金額を見直したため経常収支比率が増加した。しかし、処理区域内人口の水洗化率は高く、ほぼ全ての家庭が接続を終えている状況であり、人口も減少傾向にあることから、使用料収入は今後も徐々に減少すると予測される。令和2年度に下水道事業全体としての維持管理費の抑制を図ることを目的に、漁業集落排水事業処理区も含めた処理場の統廃合について検討を行ったが、当処理区は統廃合不利の結果となった。処理場の汚水処理能力は、処理区の立地上、海水浴客等による処理水量の突発的な増加に対応できるよう余裕を持たせた設計になっている。海水浴場は平成28年度に閉鎖され、現状では平均して処理能力の2割程度しか活用されていない。このため、必要最小限の機器の更新にとどめ、維持管理費を抑制する必要がある。最新年度の汚水処理原価が全国平均の約3倍であるため、特定環境保全公共下水道事業・農業集落排水事業の状況もあわせ、今後も使用料の適正化に向け、定期的な分析・算定基準の見直しを継続して行う必要がある。
老朽化の状況について
処理場・管渠ともに、まだ耐用年数を迎えていない。施設設備の定期的な点検・整備を行うことで、深刻な故障が起こらぬよう管理運営を行っている。施設設備の長寿命化を目指し、平成25年度に詳細な機能診断を行った上で保全計画を策定した。この計画に基づき、平成26年度に実施設計を行い、平成27年度・平成28年度の2ヶ年をかけ、施設設備の長寿命化工事を実施した。また、今後も適宜保全計画の見直しを行い、将来必ず発生する施設設備の更新・更生にかかる費用の平準化を図る。
全体総括
平成28年度より、瀬戸内市では下水道事業全般に企業会計を導入し、今まで以上に経営状態が明確に把握できるようになっている。漁業集落排水事業においては、処理区の立地条件から、隣接する他の事業の処理区との接続による統合が難しく、単独での事業を継続する必要がある。そのためには、ストックマネジメント手法の活用・施設設備の長寿命化に努めること・処理場の処理能力の最適化・より高性能で低コストな処理方法への変更等を計画的に検討・実施し、維持管理費抑制を行う必要がある。平成28年度に下水道事業経営戦略を策定し、令和2年度にその見直しを行ったが、下水道事業全般の安定した運営にはより長期的な視点に立った計画が必要である。この長期的な計画である下水道ビジョンについて、令和4年度の策定を目指して準備を進めている。