経営の健全性・効率性について
収益性については、平成22年度地方公営企業法適用以降、黒字決算を続けており、類似団体平均及び全国平均と比較しても遜色なく、順調な経営状況にあるといえます。これは、流域下水道への接続によるスケールメリットを享受していることや、諏訪湖浄化に対する住民理解の高さから、下水道接続への理解が得られたことに起因するものと考えられます。後段については、平成26年度時点の『水洗化率』が98.78%と類似団体平均及び全国平均と比較しても高い水準であることからも見てとれます。一方で、当市特有の軟弱地盤によって下水道建設費が高くなりがちであることや、この財源を企業債の発行に依存したことにより、『企業債残高対事業規模比率』は、類似団体平均及び全国平均と比較して高い数値となっています。これらに係る費用は、減価償却費や企業債利息となって資本費を増額させ、『汚水処理原価』が高い要因にもなっています。また、平成26年度の会計制度見直しにより、『流動比率』は100%を下回りました。これは、1年以内に償還予定の企業債償還元金が流動負債計上された影響によるものです。現在、収益は確保できているものの、十分な資金が内部留保されていない状況にあります。『流動比率』は、今後改善傾向を示しつつも、100%まで回復するには暫く時間がかかると見込んでいます。
老朽化の状況について
施設の老朽化については、当市の下水道施設の建設開始が昭和48年度であること、かつ、保有する資産のほとんどが法定耐用年数50年の下水道管であることから、『有形固定資産減価償却率』、『管渠老朽化率』及び『管渠改善率』は類似団体平均及び全国平均と比較して低い数値を示しています。ただし、当市の下水道は昭和50年代後半に建設のピークがあり、今後、比較的早くまた短期間のうちに老朽化に対する費用が増加してくるものと見込んでいます。
全体総括
経営の健全性について、当面の収益性に大きな問題はないものの、内部留保が十分でない現状は、施設の更新需要の点から懸念材料となっています。これは、過去に発行した企業債(借金)が多額であり、その償還(返済)が重くのしかかっていることに起因しています。平成22年度地方公営企業法適用後は、単年度支出ではなく金利を含めた複数年での総支出を重視し、企業債の新規発行を抑制していますが、長期的な視点に立った財務体質の強化が必要であると考えます。老朽化については、平成22年度より国庫交付金を活用しながら計画的に老朽管の更生・更新事業を進めています。今後は、平成27年度実施中である下水道台帳の電子化によって既存資産のデータ分析が可能となることから、詳細な投資及び財源の将来予測を立て、これを基に健全な企業経営を行っていく必要があると考えます。