経営の健全性・効率性について
人口減少や節水機器の普及により、近年、有収水量が低下しており給水収益が減少している。また、施設の老朽化が維持管理費を増加させ、給水収益の減少と相まって経常収支の状況を悪化させている。平成27年度は集合住宅や商業施設の建設の影響で給水収益の減少が抑えられ、一方の支出面においても起債利息の低減により、経常収支は改善されている。しかし、給水収益の減少傾向等経常収支の構造的な問題は解消されていないため、今後も累積欠損金が増加し、現金等の流動資産の減少に伴い流動比率は低下する見込みである。南部町の水道事業は、地理的、地形的な不利を補うため、多くの施設運営を余儀なくされている。これらの新設・更新に際しては企業債による借入を財源としているが、給水人口の規模が小さいため企業債残高対給水収益比率は極めて低い。経常収支の改善についてもそうだが、これら企業債残高等の流動負債を賄うためにも、料金改定等による収益構造の見直しの検討が必要である。料金回収率においても88.27~97.26%で推移しており、給水原価を供給単価で賄うことが出来ていないことがわかる。また、給水原価の推移は年々増加の傾向を確認することができるが、これは、前述したように施設の老朽化に伴う修繕費等の維持管理費用が増加しているためである。施設の利用率だが、これについても、人口減少等に伴う配水料の減少により余剰が生じ始めており、将来的には施設の統廃合等事業の合理化を検討する必要がある。有収率については、漏水対策等により改善の傾向もみられるが、これも施設の老朽化により絶え間なく漏水が発生しており不安定な状況である。
老朽化の状況について
施設の耐用年数に応じた老朽施設の更新は適時行われておらず全体的に経年化が進んでいる。とりわけ管路の経年化は著しく、漏水の発生を増大させ、それに対応するため維持管理費が増えており経常収支を悪化させている。経営戦略の策定による更新需要の明確化と具体的な更新計画の実施が課題となる。
全体総括
経常収支でみられるように、収入構造が脆弱であるため財政収支は極めて不安定であり、収入の主な基盤である給水収益を増加させるため、料金改定の検討が必要である。また、将来の更新需要を明確にするため経営戦略の策定により施設の更新計画を具体的に実施することが必要である。