経営の健全性・効率性について
本町の水道料金は全国平均とほぼ同水準であるが、経常収支比率、料金回収率ともに平均値及び類似団体平均値を下回っているため、給水収益等の収益で維持管理費等の費用が賄えていない状況である。しかし、前年度と比較すると当該値の改善が見られるため、更なるランニングコスト等の削減に努め経営改善に向けた取組みを進めていく。企業債残高対給水収益比率においては、平均値及び類似団体平均値と比較すると、企業債残高が過大になっており、将来世代への負担が重くなっていると考えられる。投資規模の見直し、企業債以外の国庫補助等の財源の活用等を検討する必要がある。給水原価においては、前年度より低い数値となったが類似団体平均値よりは高い数値である。これは平成27年度に町道拡幅に伴う水道管の撤去を実施することとなり約22,300千円の除却費が発生したことが影響している。累積欠損金比率においては、累積欠損金は発生しておらず、健全な経営状況にあるといえる。流動比率においては、前年度よりも増加しており、平均値とほぼ同水準であるため、1年以内の支払能力は問題ないといえる。施設利用率においては、前年度よりも高い数値となっており、平均値を上回っているが、平成27年度の有収率は前年度数値、平均値ともに下回っている状況である。これは、平成28年1月末に発生した寒波による水道管の凍結・破裂に伴う宅内漏水分の料金を減免したことが大きな原因となっている。これは一過性のものであるが、それ以外にも管路の老朽化による漏水等も発生しており、収益につながらない無収水量が流出されているため、漏水箇所の特定や老朽管の更新等の漏水防止対策を講じる必要がある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率においては、平均値を下回っており、施設の老朽化は他団体と比較して進んでいないので良好である。管路経年化率においては、平均値を下回っており、管路の老朽化は他団体と比較して進んでいないので良好である。管路更新率においては、平均値を下回っており、管路の更新ペースは他団体と比較して遅れている。これらの指標により、本町の水道施設・管路等の状況は、他団体と比較して老朽化が抑制されているが、平成27年度の更新ペースは若干遅れているといえる。また近年有収率が低くなっていることから、管路の老朽化に伴う漏水が多く発生しつつあると考えられる。本町では中長期的な事業計画を策定した「岩美町水道事業ビジョン」に基づき、平成27年度より老朽化の著しい水道施設から、施設の更新にあわせて国庫補助等を活用した管路等施設の耐震化を順次進めているところである。(「岩美町水道管路耐震化推進事業」)これにより有収率の向上、管路更新率の向上を目指すものである。
全体総括
本町は累積欠損金はなく、水道料金は全国平均とほぼ同水準であるが、経常収支比率及び料金回収率は100%を下回っており、前年度より多少の改善はみられるものの、経営に必要な経費を水道料金等で賄うことができていない状況にある。今後も人口減少、節水型機器の普及等により給水収益は減少傾向にあると予測されるので、中長期的な視野に基づく計画的な経営に取り組み、徹底した効率化、経営健全化を行うことが必要である。なお、今後とも料金の収納強化を図り、確実に料金収入を確保していく必要がある。また、企業債残高対給水収益比率が高いことから、企業債を財源とした管路更新が進められてきていると考えられる。漏水防止対策・有収率の向上・災害時に備えた管路の耐震化等、今後も老朽化した管路の更新は必要であるが、これ以上企業債残高が過大となると将来世代への負担も増大となる。よって、平成27年度より岩美町水道管路耐震化推進事業を実施し、老朽化した管路の更新・耐震化を計画的に進めているが、この事業の財源としては国庫補助金、一般会計出資金をフルに活用することとし、企業債の借入れを抑制していく必要がある。また、水道事業の中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」を平成30年度末までに策定し、経営基盤強化と財政マネジメントの向上を図ることとする。