経営の健全性・効率性について
・①経常損益、②累積欠損金については、阿曽浄水場の更新による費用の大幅増により平成11年度以降単年度損失を計上してきており、平成14年度に料金改定(改定率7.48%)による収益の改善や、その後の職員数3名削減、企業債借換実施等による費用の削減を実施したものの、単年度損失は解消までは至らず、累積欠損金が増大してきたところである。また、国庫補助事業活用による簡易水道事業統合を進める中で、平成24年度の単年度損失が対前年度比増加に転じたことや、費用低減化の取組みだけでは単年度損失解消は困難なことから、平成25年度に料金改定(改定率8.09%)を実施し、平成25年度からは単年度黒字化している。経常収支黒字化により、累積欠損金は減少に転じたが、給水人口減少により給水収益は毎年度2%近く減少してきており、単年度利益の減少が進んでいる。今後は、施設のダウンサイジングや施設効率の向上といった施設費用の低減化に重点的に取り組む必要があると考える。・③流動比率については、これまでも比較的良好であるが、平成26年度の大幅減少は、会計制度の変更に伴う算定上のものであり、類似団体の平均値も同じ理由により大幅な減少を示している。・④企業債残高対給水収益比率については、企業債発行額の抑制による残高削減により改善が図られてきている。・⑤料金回収率については、経常収支比率と同様の理由で改善されてきており、平成25年度の料金改定により適正に近い料金水準に到達している。・⑥給水原価については、簡易水道事業を統合する前は240円程度であったが、統合が本格的に進み250円程度となっている。統合完了後の平成30年度決算時においても10円程度の増加が見込まれることから、増加を抑えられるよう、施設更新時の投資の質を向上させる必要がある。・⑦施設利用率については、類似団体よりも数値は高く、施設能力からみた規模は適正であると思われる。本市では、浄水方法等その他の面で施設規模の縮小化を図ろうとしているが、更新のタイミングや更新による費用低減効果を見定める事業経営技量が必要となってきている。・⑧有収率については、平均して80%台を維持しており、簡易水道の統合が進んだ小規模事業体の中においては平均的な数値であると思われる。漏水については、老朽化よりもむしろ施工上の問題がほとんどであり、漏水多発区間を重点的に管路更新することで改善されてくるが、給水管の漏水については個人負担を要することから、給水装置改善命令等を継続して実施していく必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率から、水道施設全体では類似団体よりも減価償却がなされている状況にある。②管路経年化率は平成27年度に大幅に増加している。これは、本市の管路布設が主に昭和50年代以降に行われていることにも起因し、今後、③管路更新率がこのままの低い水準にあると、法定耐用年数を超えた管路延長の急激な増加が見込まれる。管路の計画的な更新のためには、法定耐用年数の40年で試算した場合、毎年度3,900m程度の更新が必要で、その場合の③管路更新率は2.5%台となるが、布設当時と現在の布設単価も大きく異なってきており、管路更新だけで毎年度1億2千万円程度の事業費が必要であることから、現在の料金水準では対応できない状況にある。
全体総括
水道事業は装置産業であり、取水・導水・浄水・送水・配水施設がなければ給水できず、給水区域の地形、人口分布、水源の種類によっても水道施設に対する投資額も変動し、その投資に見合った水道料金が算定されます。これまでは、投資と料金の水準に差があり、平成11~24年度まで赤字決算となっておりました。赤字から黒字へ転換するまでの間に、投資と料金の関係性が重要視され、あらゆる方面での改善を繰り返すことによって現行料金水準で黒字化を果たしております。赤字経営を経験しているからこそ、投資内容を経営側が把握し、投資効果を最大化する努力を続けており、投資による経営改善を図る経営投資を実施しています。また、今後は、経営指標等だけではなく、重点課題やその対策が目に見える形で情報発信できるよう努力していきます。