経営の状況について
本県では、球磨川水系の3発電所(市房第一、市房第二、笠振)、緑川水系の3発電所(緑川第一、緑川第二、緑川第三)及び菊池川水系の1発電所(菊鹿)の7水力発電所と阿蘇車帰風力発電所の計8か所の発電所で発電を行い、九州電力株式会社に電力を供給している。○経常収支比率及び営業収支比率は、近年100%を上回っており、経営は堅調に推移している。○流動比率は、荒瀬ダム撤去工事の本格化に伴い平成24年度から低下したものの、980%と短期的な支払い能力を十分確保している。○供給原価は、分母となる供給電力量が天候等により大きく左右されることなどから年度間の変動が大きいが、平成27年度は、雨量に恵まれたことや大きな故障がなかったことにより水力発電の電力量が増加したことなどから、平均値より低額となっている。○EBITDA(減価償却前営業利益)は、荒瀬ダム撤去に係る特別損失額の影響等により、平均値を下回っているが、平成27年度は特別損失の減少により上昇している。
経営のリスクについて
○設備利用率・水力発電については、発電方式、天候、地域特性に大きく左右されるが、平成27年度は天候に恵まれたこと等により全国平均とほぼ同様となっている。・風力発電については、風況や立地に大きく左右されるが、平成27年度は故障や自主保安による長期停止のため、利用率は全国平均を大きく下回った。〇修繕費比率・水力発電については、近年、大きな修繕がなかったため、全国平均を大きく下回っている。・風力発電については、平成27年度は多額の修繕費や点検費が発生したことから、全国平均を大きく上回った。〇企業債残高対料金収入比率・水力発電については、近年は企業債発行が無く企業債の償還が進んでいることから全国平均を下回る状況となっている。なお、今後は、老朽化した主要4発電所のリニューアル工事のための企業債発行により企業債残高は増加する見込み。・風力発電については、建設時に発行した企業債の償還が順調に進んでいるが、平成27年度は故障による料金収入の大幅減のため全国平均を大きく上回った。〇有形固定資産減価償却率・主要発電所である市房発電所及び緑川発電所の4施設は、運転開始から40~50年が経過し、償却率は全国平均を大きく上回る78%となっている。このため、現在リニューアル工事を進めている。また、平成8年~13年に運転開始した笠振発電所等3施設の償却率は49%となり、全国平均を下回っている。・平成17年に運転開始した阿蘇車帰風力発電所の償却率は54.6%となり、全国平均を若干上回っている。〇FIT収入割合・水力発電については、7施設のうち小規模な2施設がFIT適用となっており収入割合は9.6%と全国平均を下回っている。今後、非適用5施設のうち主力の4施設については、リニューアル後にFIT適用となる予定である。・風力発電については、平成24年度途中から全収入がFIT適用となっており、FIT適用期間終了(H37)後は、収入が大きく変動するリスクを抱えている。
全体総括
電気事業全体では、主要水力発電所の老朽化や風力発電所の故障等の課題はあるが、これまでのところ経営は堅調に推移している。現在、平成27年3月に策定した「熊本県企業局経営基本計画(第四期)」に基づき、経営基盤の強化及び安定した事業継続のための計画的かつ効率的な事業運営を進めている。具体的には、以下のとおり。①安定した発電量の確保老朽化した主要水力発電所4施設の発電設備をリニューアルし、安定した運転を継続的に行う。なお、リニューアル工事完了後(平成31年度以降)は随時FITに移行する。また、設備の老朽化が進みつつある風力発電設備について、点検強化や設備の更新等により故障等による停止期間の短縮を図り、発電量を確保する。②電力システム改革への対応電力システム改革については、今後の制度改正の内容を注視しながら適切に対応する。③荒瀬ダム撤去への取組み、撤去費用の確保ダム本体の撤去工事については、平成29年度で完了する予定であり、安全と環境に配慮した円滑な撤去工事の実施と撤去資金の確保を図る。また、風力発電に係るFIT適用期間終了(H37)後の事業のあり方については、現時点で方針は定まっていないが、平成31年度までに策定を予定している経営戦略において、FIT終了による電力料収入の変動リスクも踏まえて検討することとしている。