地域において担っている役割
当院は、新宮東牟婁医療圏で最大の病床数を有する地域の拠点病院として、医療圏における中核的な役割を担っている。標榜している診療科は19科で、来院患者は新宮・東牟婁地域の他にも三重県熊野市・南牟婁郡からの来院も多い。また、救急告示病院の指定を受け、24時間の2次救急、場合によっては3次救急まで対応している。更には災害拠点病院にも指定されており、有事の際には重要な役割を担うことになっている。
経営の健全性・効率性について
平成24年度の経常収支黒字化以降、患者数や患者単価の減少による医業収益の減少や、高度医療機器の更新に伴う減価償却費の増加により、経常収支は赤字の状態が続いている。このため、平成26年度に施行された会計基準の新制度への移行に伴い皆減となった累積欠損金が、それ以降の赤字決算により平成28年度には再び発生している状況である。収益面では、病床利用率は全国平均を上回っているものの、入院・外来患者単価が低いため、上昇に向けた取り組みが必要である。費用面では、職員給与費対医業収益比率は全国平均を下回っているものの、増加傾向にあるため、更なる給与費の減少若しくは医業収益の増加に取り組む必要がある。材料費対医業収益比率は低減に向けた取り組みにより減少傾向にある
老朽化の状況について
建物本体は大きな増改築を行わなければ、減価償却が進むだけとなるため、減価償却費比率は増加する。一方の医療機器は、機器の耐用年数も短く、医学の進歩に伴い新たな医療機器が開発されている中で、地域の中核病院にふさわしい一定水準の機器を揃える必要があり、財政状況を勘案しながら定期的な更新を行っているため、病院規模の増減が無ければ基本的には横ばいとなる。これらの事から、有形固定資産全体に対する減価償却は年々増加しているが、器械備品に限ればほぼ横ばいで推移している。但し、平成24年度以降は高度医療機器を順次更新しているため、1床あたりの有形固定資産は若干増加傾向にある。
全体総括
当院は平成13年度の開院以来、圏内における医療の要として、圏域内で医療が完結できる体制づくりを目指し、医師・看護師等の医療スタッフや施設設備、医療機器等の充実を図ってきたが、地理的要因等による医師不足や、過疎高齢化による人口減等に伴い、患者数は減少傾向にある。現在は、平成29年3月に策定した「新宮市立医療センター改革プラン(平成29年度~平成32年度)の着実な履行により、平成32年度の経常収支黒字化に向け取り組んでいるところである。今後も引き続き当地域の基幹病院・中核病院として、各医療機関との機能分化や連携を図りながら、地域に必要とされる医療を提供する責務を果たしていく。