地域において担っている役割
上伊那地域の基幹総合病院として、救急医療、高度・専門医療など病気の急性期における診療を主体としており、・救命救急センター・地域がん診療連携拠点病院・地域医療支援病院・地域周産期母子健康センター・臨床研修病院・災害拠点病院・第二種感染症指定医療機関などに指定されています。
経営の健全性・効率性について
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う影響は続くものの「④病床利用率」は回復に転じつつあり、「①経常収支比率」や「②医業収支比率」も前年度から改善が図られましたが、いずれも100%には達していません。「②医業収支比率」は類似病院平均を上回る状態を保っているものの、医業外の補助金や繰入金も含めた「①経常収支比率」では類似病院平均に遠く及ばない状態が続いています。なお、医業収益から他会計負担金を除外して算出する修正医業収支比率は85.0%となっています。赤字決算となり累積欠損金が増加したため「③累積欠損金比率」もわずかに増加しました。「⑦職員給与費対医業収益比率」は入院・外来収益を中心とする医業収益の回復により減少しましたが、材料費は医業収益を上回る伸びとなったため「⑧材料費対医業収益比率」はさらに上昇しました。材料費の中では特に薬品費の伸びが大きく、抗がん剤などの高額薬品を使っての治療を行う患者の増加により「⑤入院患者1人1日当たり収益」や「⑥外来患者1人1日当たり収益」は類似病院平均を共に大きく上回っています。
老朽化の状況について
新型コロナウイルス感染症への対応に必要な機械器具やMRI装置の更新など高度・専門医療を提供するために必要な投資は継続していますが、「①有形固定資産減価償却率」は50%を超え、「②器械備品減価償却率」も上昇しています。「③1床当たり有形固定資産」は、類似病院平均値と比較して1,689万円多く、充実していると見ることができますが、減価償却費の増大にも繋がるため、特に高額医療機器については、メンテナンスを行い安全性に配慮しながら、可能な限り使い続けるなどの対応が必要です。また、今後の更新計画について精査を行い平準化を図っていく必要があります。
全体総括
令和2年3月からの新型コロナウイルス感染症の発生及び拡大による影響は令和3年度も続きました。上伊那医療圏唯一の感染症指定医療機関としての責務を果たしながら、地域の基幹病院として、引き続き高度医療の提供に努めていきます。平成29年の北棟開設による設備投資により増加した減価償却費は、当面年10億円を超える規模で推移することが見込まれるほか、診療体制の充実に伴って人件費も増加しています。更に薬品費を始めとする材料費の増加、燃料費の高騰など、取り巻く環境は厳しさを増す中で、単年度収支を黒字とするためには収益の更なる確保が不可欠となっています。耳鼻咽喉科の常勤化など更なる新規患者の確保を図るほか、相対的な枠の不足により現状頭打ちとなっている手術件数の増加を図るため、令和6年度の完成を目標に手術室の増設を進めます。