地域において担っている役割
県立がんセンターは、県内唯一のがん専門病院として、複数の治療法を組み合わせた集学的治療や身体への負担の少ない低侵襲治療、QOL改善のための緩和ケア等、高度・専門的かつ患者にとって最適な医療の提供を行うとともに、がん診療連携拠点病院として、地域医療機関との連携にも積極的に取り組んでいる。また、がんゲノム医療連携病院として、がんゲノム医療中核拠点病院と連携し、患者への情報提供や治療を行っている。令和2年4月から新型コロナウイルス感染症患者の受入を開始している。
経営の健全性・効率性について
(時系列比較)入院患者数の減少により①病床利用率は悪化したものの、⑤入院患者1人1日当たりの収益が増加したことで、①経常収支比率、②医業収支比率、③累積欠損金比率は前年度から改善した。(平均値比較)⑤入院患者1人1日当たり収益及び⑥外来患者1人1日当たり収益は類似病院平均値よりも高い一方、④病床利用率が低く、⑧材料費対医業収益比率も高い状況となっており、診療報酬の出来高請求からDPC請求への移行促進、共同購入組織を活用した材料費の価格交渉等により、医業収支の改善に取り組んでいる。
老朽化の状況について
(時系列比較)投資抑制方針の下、①有形固定資産減価償却率、②器械備品償却率は上昇傾向となっている。今後も、適正投資額を定量的に計測した上で、高度・専門医療の提供に必要な設備整備を確実に行い、キャッシュ・フローの健全化を目指す。(平均値比較)③1床当たり有形固定資産が類似病院平均値よりも高く、類似病院と比較すると投資が大きくなっている。これは、採算をとることが困難な高度医療を担う県立のがん専門病院として、高度・専門医療の提供に必要な医療設備の整備をした結果である。
全体総括
平成28年度の通院治療センター拡充以降、入院しなければ使用できなかった抗がん剤が外来でも使用可能となり、入院患者は減少傾向にある。外来収益は入院収益と比較して利益率が低く、医業収支比率の悪化したが、令和3年度に院内の体制を見直し、入院基本料に係る算定区分を変更したことで、入院収益が大きく改善し、前年に引き続き経常収支は黒字となった。今後は、「他の医療機関による提供が困難な医療を継続して提供する」という県立病院の役割を果たしつつ、地域医療機関との連携強化による新規入院患者数の増加を図り、病床利用率を改善するとともに、価格交渉や購入方法の見直しによる費用削減を図り、経常収支の安定的な黒字化を目指す。