地域において担っている役割
当院は、新宮東牟婁医療圏で最大の病床数を有する地域の拠点病院として、医療圏における中核的な役割を担っている。標榜している診療科は19科で、来院患者は新宮・東牟婁地域の他にも三重県熊野市・南牟婁郡からの来院も多い。また、救急告示病院の指定を受け、24時間の2次救急、場合によっては3次救急まで対応している。更には災害拠点病院にも指定されており、有事の際には重要な役割を担うことになっている。
経営の健全性・効率性について
令和3年度決算は、新型コロナウイルス感染症の影響や病棟の改修工事等により、入院収益が減少したものの、新型コロナウイルス感染症関連の補助金等の増加等により、①経常収支比率は改善したが、②医業収支比率は減少した。③累積欠損金は純利益の発生により解消した。④病床利用率は、新型コロナの影響や病棟の改修工事等で減少した。患者単価は、⑤入院患者単価・⑥外来患者単価いずれも全国平均を下回っているため、患者単価上昇に向けた取組や収益に対する費用の適正化を図り、経費節減にも取り組む必要がある。⑦職員給与費対医業収益比率は、分母の医業収益が減少したため数値が悪化し、⑧材料費対医業収益比率は、医業収益の減少等により、数値が悪化した。
老朽化の状況について
建物本体は大きな増改築を行わなければ、減価償却が進むだけとなるため、減価償却費比率は増加する。一方の医療機器は、機器の耐用年数も短く、医学の進歩に伴い新たな医療機器が開発されている中で、地域の中核病院にふさわしい一定水準の機器を揃える必要があり、財政状況を勘案しながら定期的な更新を行っているため、病院規模の増減が無ければ基本的には横ばいとなる。近年は新たな医療機器等の購入抑制に努め、減価償却費を縮減する事で収支の改善を図っているが、①有形固定資産減価償却率・②器械備品減価償却率はやや増加傾向にある。また、③1床当たり有形固定資産については、全国平均より下回っている。
全体総括
当院は平成13年度の開院以来、圏内における医療の要として、圏域内で医療が完結できる体制づくりを目指し、医療スタッフや施設設備、医療機器等の充実を図ってきたが、地理的要因等による医師不足や過疎高齢化による人口減等に伴い患者数は減少傾向にある。令和3年度についても、昨年度同様、新型コロナウイルス感染症の影響等により医業収益が減少となった。コロナ関連補助金等の医業外収益の増加により、経常収支黒字化は達成したが、圏域の状況を踏まえた医業収益の改善が課題である。今後は、医療機器の更新や建物附帯施設等の整備も進めて行く必要がある事から、減価償却費等も踏まえ、収益の確保に努める必要がある。今後も当地域の基幹病院・中核病院として、各医療機関との機能分化や連携を図りながら、地域に必要とされる医療を提供する責務を果たしていく。