地域において担っている役割
当院は、建物の老朽化、敷地の狭隘化、医師不足等により、地域から求められる役割や機能を十分に発揮することが難しい状況となり、平成26年11月に新築移転に至った。現在では、病床数320床、17の診療科を有し、また、一宮市、清須市等を含めた尾張西北部広域二次救急医療圏において、当院を含めた9病院による輪番制による二次救急体制を維持しており、地域の中核病院としての役割を担っている。しかしながら、現在まで患者数は徐々に増えてきているものの、医師不足により一部休床中の病棟があるのが現状である。
経営の健全性・効率性について
④病床利用率については、医師そのものの不足、専門医の不足により、診療科を制限せざるを得ない状況であり、患者数の大幅な増加に至らず、また、46床が休床となっていることから許可病床利用率が70%に達せず、平均値を大きく下回っている。H29利用率が減少したのは、年度途中に内科医師が退職したことにより、入院患者数が対前年度比で約6,000人減少したことが影響している。病床利用率の低さは、収益に影響し、H29入院収益が対前年度比で約160,000千円減少し、依然として②医業収支比率は平均値と大きな差がある。①経常収支比率についても、一般会計から繰入れをしているが、②と同様に平均値に対し大きな差がある。⑤入院患者1人1日当たり収益については、年々増加し平均値とほぼ同額ではあるが、⑥外来患者1人1日当たり収益における平均値との差については、一般的に1人当たりの収益が高いとされる救急患者の割合が少ないことが影響している。今後は、特に日勤中の救急患者の受入れを積極的に行い、単価の増加に努めるとともに患者数の増加に繋げていく。その他、⑦職員給与費対医業収益比率は平均値より上回っているが、看護師等職員数の年々増加によるものであるが、それ以上に医業収益が少ないことが影響している。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率については、平成26年11月に新築したため、建物の減価償却が開始したばかりで、平成26年度以降は低い数値となっている。②器械備品減価償却率についても、①と同様、平成26年11月の新病院開院を機に機械の入替を多数行ったため平成26年度以降低い数値となっている。なお、H29に数値が大きく増加したのは、H28にMRIの導入、医療情報システムの更新したことによる。③1床当たり有形固定資産についても、①②と同様、平成26年11月の新築及び機械の導入により、平成26年度以降多額となっている。
全体総括
医師不足が続き、その影響で患者数及び収益は伸びず、依然として厳しい経営状況である。29年度は、内科の患者数の対前年度における減少が著しく、さらに厳しい状況である。H27・H28の経営状況を基に新公立病院改革プランを平成29年3月に作成したが、29年度決算が厳しい状況であったため、プランにおける収支計画と大きく乖離している。このことから、30年度中にプランの見直しを行う予定である。また、一宮市と稲沢市で構成する尾張西部医療圏にて、病院間で地域医療構想における情報を共有し、地域に最適な病床の機能分化と連携、効率的で質の高い医療体制の構築に向け議論を重ねているところである。経営改善、病床利用率向上に向け、今後も、関連医局への医師派遣依頼を継続するとともに、医師人材派遣業者を利用し医師確保により一層努め、患者数の増加のため救急患者の受入体制を強化することに取り組む。