経営の健全性・効率性について
【経営の健全性】平成22年度より、単年度ごとの赤字が続いており、平成26年度末で、赤字の累計は1億9千万円程となり、経営状況は大変厳しい状況です。これまで収支改善のため、人件費の抑制や物品購入等の費用節減など経費の圧縮に努めてきました。一方で、利用者数の減少や節水機器の普及により、料金収入の減少が続いており、収支が好転しない状況となっています。具体的には「①経常収支比率」で示すとおり、収入は支出の84%ほどしか賄えておらず、赤字となっています。「③流動比率」の減少は、預金の減少・支払能力の低下を表しており、事業の安全性が脅かされている状況を示しています。また、料金水準についてみると、「⑤料金回収率」が示すとおり、回収率が100%未満であることは、販売単価が製造原価を下回っている状態です。また、全国平均値・類似団体平均値いずれと比較しても低い状況も続いていることから、料金の見直しが必要な状況となっています。【効率性】「⑦施設利用率」は、配水能力のうち、実際どの程度利用しているかの平均値を示しており、斜里町は45%ほどであり、全国平均値及び類似団体平均値に比べ低くなっています。これは、上水道事業においては防災対応時への備える分と、簡易水道事業においては、観光地区であることから、季節(期間)ごとの変動と年度ごとの観光客の変動に対応できる配水能力を確保しているという特殊性があることによるものです。また、上水道と簡易水道では地理的に約40kmは離れていることもあり、施設の統廃合やダウンサイジングは現実的ではなく、一概に効率性が悪いとは言えない状況です。
老朽化の状況について
老朽化がどの程度進んでいるかを表す指標が「①有形固定資産減価償却率」です。上昇傾向ですが、全国平均値及び類似団体平均値と比べ低いことから、特段、老朽化が進んでいる状況ではないと言えます。また、耐用年数を超えた管路の割合を表す「②管路経年化率」も、類似団体等よりも低く、老朽化は他に比べ進んでいないと状況です。一方、1年間に更新した管路の割合を表す「③管路更新率」は、減少傾向です。これは、平成22年度までは優先的に老朽化対策をしてきたものの、企業債(借金)の依存度が高いことや赤字が続いていることから、その後は管路更新を先延ばしにしているためです。更新率が0.48%の場合、全ての管を更新するのに約200年かかるペースとなります。赤字が続くと、取替更新がさらに先送りせざるを得なくなり、漏水事故が多くなる危険性が高まるため、収支状況を改善し、計画的に老朽管の更新を行っていく必要があります。
全体総括
水道事業は、住民生活のみならず、経済活動を支える上でも欠くことはできない事業であり、「安心・安全・安定」に水を供給し続けていく必要があります。これまでは、老朽化対策を優先的に進めてきましたが、今後は、適切な時期に老朽管などの施設更新を行うことや、それを可能にする経営環境にするために、これまで以上に経費圧縮など様々な努力を行う必要があります。また、人口減少に伴う利用者数の落ち込みなど、将来も大変厳しい経営環境となることを想定しなければならず、水道水を供給し続けるためには、収支改善のための料金改定は避けられない状況です。そのことから、現在予定している平成28年度の料金改定にむけて、利用者・利用団体・町議会等への説明・協議等を丁寧に行い、ご意見を頂いたうえで、料金改定の取り組みを進め、水道水の「安心・安全・安定」供給の継続を図ります。