地域において担っている役割
地域の医療水準を守るため、常勤医不足が続く中でも総合病院的医療を提供するとともに、全診療科24時間、365日対応する救急医療や、子どもを安心して産んで育てる環境づくりのため周産期・小児医療を提供している。災害拠点病院や第二種感染症指定医療機関の指定を受け、必要時に適切な医療を提供できる体制を維持している。研修医の教育や医学生の臨床実習の提供など、医療人育成の役割を担っている。
経営の健全性・効率性について
常勤医不足により診療を維持するための出張医の経費が嵩む上、患者数の減少に伴い診療収益も減少していることから、経常収支比率、医業収支比率は類似団体の平均を下回り、単年度収支の赤字が続いており、累積欠損金比率も類似団体の平均を大きく上回っている。70%を下回っている病床利用率改善のため、平成29年10月に54床の削減を実施した。患者1人1日当たり収益は、入院・外来ともに類似団体の平均を下回っているが、看護基準などから診療報酬上高い点数の入院基本料を取得できないこと、専門医の不足や不在、設備などの関係により難易度の高い手術や検査、放射線治療などの高度医療を提供できないことが要因として挙げられ、診療単価向上が課題となっている。診療単価が低い分、材料費対医業収益比率は類似団体の平均を下回っている。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率及び器械備品減価償却率ともにに類似団体の平均を上回っており、それぞれ64.6%、78.0%と老朽化が進んでいる。平成13年度の病院建設から16年が経過し、現在の設備の長寿命化を基本とした大規模修繕計画の策定が必要となっている。医療器械は、緊急性や必要度、収益性や医師からの要望などを考慮し優先順位付けをしながら更新を進めている。平成24年1月に導入した診療に関わる記録や業務の支援、検査、処方の情報伝達や医療会計情報などのシステムが更新時期を迎えるため、電子カルテシステムの導入を含めた更新内容の検討を進めている。
全体総括
平成29年3月に策定した新病院改革プランに基づき、医療環境が変化していく中でも継続して安定した医療を提供していくための取組みを進めている。平成29年度は、病床の削減や人工透析ベッドの拡充のほか、地域の将来を見据えた地域包括ケア病棟の開設へ向けた準備を開始した。職員給与費対医業収益比率は類似団体の平均を下回っているが、出張医の委託費など職員給与費に反映されていない経費を加えると比率は60%を超えるため、定員適正化計画の策定による収益に見合った適正な職員配置が必要である。全国的な医師の地域偏在による医師不足や地域の少子高齢化、人口減少が進む中、今後も非常に厳しい経営状況が続くことが予想されており、更なる経営改善に向けて、病院改革プランの見直しが必要となっている。