地域において担っている役割
当院は和歌山県内の地域中核病院の中で五疾病・五事業すべてを病院単体で対応可能な唯一の病院として、当該圏域の医療を守る為、救急・小児・周産期・精神及び災害医療等の不採算部門を担っている。基幹となる病院として、「質の高いがん医療」が受けられるよう和歌山県独自で指定する「がん診療連携推進病院」、若い医師の育成・指導の場として「臨床研修指定病院」、へき地・過疎地域の継続的かつ安定的な医療の確保に貢献する為「へき地医療拠点病院」にそれぞれ指定されている。平成30年度には「救急科」を開設し、医療体制の充実を図った。今年度は新型コロナウイルス感染症の重点医療機関として感染患者の入院受入、PCR検査や発熱外来等の感染対応をおこなっている。
経営の健全性・効率性について
①②③④新型コロナウイルス感染症に対応し、それに対する補助金で経常収支比率が上がった。また一般病棟52床を新型コロナウイルス専用病棟として確保し、全床空床となる期間もあったため病床稼働が下がり、医業収益の減収となり医業収支比率、累積欠損金比率、病床利用率が悪化した。⑤当院は精神病棟を有しており、長期入院患者も多い為、入院算定が低くなることから平均よりも下回っていると考えられる。⑥地域の状況として当院にしかない診療科もあり、かかりつけ医の機能も有している病院として軽症患者も多く受診している。それにより患者数が増え、一人当たりの診療単価のバラつきが大きくなる為、例年同様の数値になっている。⑦事務員等を委託会社の派遣から会計年度任用職員に切り替えたことで人件費が増加した事が挙げられる。⑧材料費対医業収益比率は、昨年度に引き続き材料費の見直し、C型肝炎治療薬の投薬対象が減少したことによる薬品費の減少が挙げられる。
老朽化の状況について
①②有形固定資産・器械備品減価償却率共に平均値より高く、有形固定資産減価償却率は平成30年度より平均値を越え、器械備品減価償却率も平成30年度を境に大幅に平均を越えている。これらについては、平成29年度に大型器械の減価償却が終了してから新たに更新を行っていないことや、建物の老朽化が進んでいると考えられる。③1床当たり有形固定資産は、例年通り平均値を下回っているが毎年微増している。以上のことから、今後も資産の適切な更新計画に取り組む必要がある。
全体総括
令和2年から新型コロナウイルス感染症の対応が始まり、空床確保や発熱外来、ワクチン接種などを行なってきたことで、それらに対する補助金があり、経常収支比率が数年来の100%を超えたが、これは一時的なものであり、医業収支比率や患者一人当たりの収益といった病院運営の基本的な部分に対して、数値を上げることが長年の課題である。保有資産に関しては、老朽化の問題が見られ、高額な器械の更新を行なっていかなければならいが、ここ数年経常収益が落ち込んでいたこともあり、更新が計画通りに行えていなかった。今後は新型コロナウイルス感染症への対応が落ち着いた後に、通常診療のなかでいかに医業収益をあげ、病院経営を行なうかが課題である。