地域において担っている役割
西南但馬地域の中核病院として、また養父市で唯一の一般病院として、急性期から慢性期、在宅医療までシームレスな医療を提供している。また公立病院として、高度医療・特殊医療・不採算医療を担い、一般病床の他に、回復期リハビリテーション・地域包括ケア・療養・緩和ケアの病床を有する、ケアミックス型の病院である。地域に欠かせない救急医療については、二次救急までを24時間365日体制で確保し、不採算地区において中核的な病院の役割を担っている。新型コロナウイルス感染症重点医療機関として病床を確保しており、軽症・中等症患者を受け入れている。
経営の健全性・効率性について
当院はケアミックス型病院であるため入院単価が低くなっている。高い病床利用率を維持することで収益を確保する必要があるが、医師不足等により病床利用率も低い。各種取組みを進めているものの、新型コロナ感染症の影響による診療制限などにより、患者数の増加には至っていない。費用の面では、給与費比率が高く、材料費比率が低いというケアミックス型病院の特徴を示している。材料費の抑制による費用削減効果は限定的であるため、経営の健全化には、給与費や委託費等の抑制対策が不可欠である。医業収支が悪化している一方、他会計繰入金や補助金が増加したことで経常収支は改善した。
老朽化の状況について
病院建替後16年を経過し、電気・空調・給排水設備などが耐用年数を迎えつつある。また、付帯施設である看護学校、老人保健施設がいずれも建築後30年となり、老朽化が進んだ状態である。機械備品については、近年ではCTやMRI、リニアックといった高額医療機器の更新のほか、R2年度には電子カルテを更新するなど、機器の老朽化に対応し、減価償却率も全国平均程度にまで改善している。一方で、減価償却費の増加が課題である。なお、当院の1床あたり有形固定資産には、付帯施設である看護学校や老人保健施設分も含まれるため、全国平均と比較し高額となっている。
全体総括
医師不足を要因とする患者数の減少により収益力が低下している一方で、人員削減や給与費の引下げが十分でないため給与費が収益を圧迫する状況にある。しかし、職員数の削減は、新興感染症等、不測の事態への対応を困難にするだけでなく、現在の方針である、医師確保による医療提供体制の充実も困難となるため、直ちに実施することは難しい。当面は、医療提供体制の充実による患者増加や、業務の効率化による人員抑制を図るほか、地域に必要な役割を担い続けられるよう、基準通りの繰入れをいただけるよう働きかけ、健全経営を目指すこととしている。ただし、当院は高齢化の先進地域にあり、高齢者人口も減少局面に入りつつあるため、今後は医療需要の減少を見込んだ職員配置や、機能・規模の見直しを段階的に実施する必要がある。