経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率について、使用料収入に加え、一般会計繰入金を投入しても100%に満たず、収益性が十分に確保されている状態とは言えない。使用料については、平成26年度に使用料改定を実施したが、単価は類似団体と比較しても安い水準にあり、使用料で賄えない費用を繰入金で補填する状況が続いている。それに関連し、⑤経費回収率についても単価が低いことに起因し、使用料収入が十分でないことから低い水準である。④企業債残高対事業規模比率については、当市の下水道普及率は97.86%であり、本事業区域内においても面整備がほぼ完了していることから、地方債償還額が地方債借入額を大きく上回っているため、大規模更新期まではこの傾向が続くと考えられる。⑥汚水処理原価については、類似団体平均値と比較した場合の数値が極端に低く、一見効率的なように見られるが、当事業は、⑧水洗化率において96.26%と高い水準にあり、人口においても減少傾向が否めないため、有収水量の増加に繋がる要素を持ち合わせない。また、汚水処理費自体についても、本事業は流域関連下水道であるため、極端な費用の圧縮は考えられず、これ以上の指標の良化は見込めない。
老朽化の状況について
③管渠改善率について、本事業は、供用開始から20年余りが経過したところであり、管路施設に関しては、法定耐用年数が長いことから劣化による改修の必要性は認められず、実施していない。また、流域関連下水道であることから、処理場に係る電気、機械設備の更新も必要としていない。しかし、起伏の多い地理状況から、マンホールポンプ場を112箇所有しているため、故障等不具合が発生した場合は、修理、交換等必要に応じ随時対応しているが、今後一斉に更新時期を迎えるため、下水道事業全体を対象として、早期にストックマネジメントの実施が必要である。
全体総括
⑥汚水処理原価について、⑤経費回収率に影響する数値であるため、できる限り圧縮を図りたい。しかし、年間有収水量を増加できれば原価は下がるが、当市の下水道普及率は97.86%、本事業の⑧水洗化率は96.26%と全国平均をも大きく上回る数値であるため、これ以上の使用料対象の捕捉は見込めない。また、汚水処理費を減少させれば原価は下がるが、汚水処理費の大部分を流域下水道維持管理費が占めているため、短期的に解決できる方法は見当たらない。今後は、管渠も含めた大量の施設更新時期の到来への備えも必要なことから、早急に綿密な経営戦略を策定し、汚水私費の原則に則った適正な使用料の値上げも視野に入れ、下水道事業全体での経営の健全性及び効率性の確保に努めたい。