経営の健全性・効率性について
経常利益は黒字であるが、経費回収率が低く、一般会計からの繰入金に依存している。流域下水道のため汚水処理原価は類似団体より低い水準にあるが、それ以上に使用料単価が低い。そのため使用料の見直しにより、令和6年度及び令和7年度に使用料を改定することが決まっている。また、不明水により有収率が低いため、不明水対策による汚水処理費用の削減が重要な課題となる。流動比率は一般会計からの繰入により類似団体より高い水準ではあるが、単独では100%を大きく下回っており、特定環境保全公共下水道事業、農業集落排水事業と合わせると若干100%を上回る程度である。預金に余裕がないため一般会計からの毎年の繰入が前提となっている。企業債残高対事業費率は類似団体より高い水準ではあるが、一昨年、去年と比べて減少している。これは面整備がほぼ完了していること、面整備時の起債償還がピークを迎えていることから、今後は減少傾向が続くと考えられる。水洗化率は既に高い水準にあり、今後大きな伸びは見込めないため、新規接続による使用料収入の増加は期待できない。当市の下水道事業は特定環境保全公共下水道、農業集落排水と合わせて1会計であることから、3事業合わせて判断すべきと考えられるが、いずれにしても大きな改善は見込めない。
老朽化の状況について
供用開始から20年余り経過したところであり、管路についてはしばらく大きな改修は必要ないと考えられる。しかし、類似団体と比較すると減価償却率が非常に高く、計画的な設備の更新が進んでいない。今後、同時期に施設の改修が重なると予想されることから、計画的な更新やその資金の確保に努めなければならない。起伏の多い地形から非常に多数のマンホールポンプを有している。機械設備は耐用年数が短く老朽化による故障のリスクが高まるため、計画的な更新が必要となる。処理施設については、流域下水道であるため更新にかかる負担は必要になるが、直接の更新工事はない。
全体総括
一般会計からの繰入が前提となっているので、その上でどうするか考える必要がある。公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水とも市内同一の使用料体系で、水洗化率が高く人口は減少傾向のため、使用料の改定を除けば収入の増加につながる要素はない。支出についても不明水対策による費用削減は見込めるが、老朽化する施設や進んでいない施設の更新に加え、電気料金の高騰等の維持管理費の増加により、厳しい状況が続くと思われる。地方公営企業法を適用して3年目となり、コロナ禍での今後の推移を確認しつつ、長期的な視野で経営の健全化に努めなければならない。