地域において担っている役割
「地域に密着した公的急性期中核病院」として地域住民の期待に応えるべく、断らない救急と円滑なベッドコントロールによる24時間365日体制での質の高い医療の提供に努め、特に脳卒中、循環器疾患に関しては、ホットラインによる24時間、近隣市町を含めた救急患者の受入れ体制を維持した。またコロナ診療においても地域における中心的な役割を果たし、十分な感染対策を講じつつ一般診療との両立を図った。地域連携では、従来からの前方連携に加え、後方連携が重要との考えに基づき、近隣15病院による小山市近郊地域医療連携協議会を各部門で開催、積極的な情報交換により、患者さんに負担をかけないスムーズな入退院を促進した。健診部門では、人間ドック健診機能評価認定施設として、「受診者、企業・団体から選ばれる安心・安全な健診施設」を目標に運営した結果、コロナ禍の中にあっても前年度並みの利用者数を確保した。
経営の健全性・効率性について
コロナ感染症の拡大による病床利用率の低下や人件費等を中心とした支出増が重荷となり、医業収支比率は3期ぶりに100%を下回る結果となった。一方、診療レベルの向上による医療高度化への不断の取組み、断らない救急への強い拘りと平均在院日数の短縮化、包括医療費支払制度(DPC)適正運用等に努めた結果、入院患者1人1日当たりの収益が前年度と比較し大きく伸長したことで、経常収支比率はほぼ前年度並みの数字を確保することができた。入院・外来収益が増収となる中、材料費に関しては業者による共同購入方式導入やSPDとの連携強化による院内在庫の適正化、また医薬品仕入業者の絞り込みとベンチマーク交渉による値引率引上げ、ジェネリック薬品品目採用率向上に院内全体が粘り強く取組んだことで、材料費対医業収益比率は前年度を下回る実績を残すことができた。
老朽化の状況について
建物・医療機器の老朽化に伴い、平成28年1月に新病院への移転と同時に院内保育所の新規建設、医療機器・システムの新規更新購入を行ったことから、新たな減価償却は平成27年度から発生している。器械備品の整備については、将来の減価償却費負担をシミュレーションしながら毎年の投資額を決めており、令和2年度は2億円を計上したが、器械備品減価償却率は増加しており、器械の老朽化傾向が見られることから、計画的な更新を進めていく方針である。建物等については、当面平均値を上回ることはないものと思料するが、今後の大規模な修繕や増設を見据え、資金手当てを含めて計画的に進める。
全体総括
当院では「最高の患者サービス」、「医療・ケアの質とレベル向上」、「全病床のフル活用」を三大基本方針としており、令和2年度もこの方針に則り、地域に密着した公的急性期中核病院としての役割を果たすべく職員一丸となって活動してきた。地域医療連携と多職種共同によるチーム医療の充実、将来当院が進むべき方向性の確立、患者満足度調査による現状確認等さまざまな問題点を洗い出し、病院全体でのスピーディーな問題解決に努めた結果、コロナ禍の逆風の中でも最終黒字を確保し、8期連続の黒字計上(純損益)を確保することができた。今後も健全な経営を維持し、日々変化する課題に迅速に対応しながら、地域に根差した医療を守るために万全を期していく。