経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率について使用料金は維持管理費と相殺する料金設定であり、償還金は視野に入っていないため、比率とした場合は当然ながら100%を割ってしまう。前年度同様事業継続により使用料収入が伸びているが、事業開始から丸11年が経過しており地方債も同様に増加しているため比率の降下傾向にある。比率だけに着目し大幅に改善させるには、維持管理費の大幅な削減、使用料金の大幅な値上げ(単純計算で1基当り1,100円/月程度の値上げ)しかないが、いずれにせよ現時点では困難である。④企業債残高対事業規模比率について人口規模の割に年間設置基数が多く事業継続による地方債増加は避けられないため、平均値よりは高い水準となっている。改善させるにはやはり使用料の値上げしかないが、類似団体と比較しても割高な料金設定のため安易に踏み切れない。⑤経費回収率について料金収入がほぼ維持管理費に見合う料金設定のため、100%には届いていないが、平均値よりは高い水準となっている。現在使用料納入状況がほぼ100%であり、将来に渡り料金の増加は見込めるが、比例し汚水処理費も増加するため大幅な改善は難しいと言える。⑥汚水処理原価について低コストで処理できており、類似団体と比較しても良好な値である。ただ今後設置基数の増加と共に原価の上昇も大いに考えられ、現に若干ながら増加傾向にあるため注視していく必要がある。⑦施設利用率について施設利用率についても、類似団体と比較して高水準な利用率であり、適切な人槽算定が行われている裏付けと言える。しかし、今後も人口減少が進んでいくことや使用休止なども考えられるため、引き続き使用人員に見合った人槽を算定していく必要がある。補足として、浄化槽附帯設備であるブロアは今後も適切に修繕を実施していく必要がある。また適正な放流水質を継続していくためにも、法定水質検査の結果を踏まえて保守清掃の柔軟な対応を心掛けていく。
老朽化の状況について
事業開始から丸11年経過はしているが、本体の耐用年数とされる30年までにはまだまだ猶予がある。まれに土圧や地震等による本体の亀裂等が発見されるケースがあるが、発見後迅速な修繕対応を実施している。浄化槽本体は、土質による劣化や腐食などが少ないFRPで形成されているため、部分的な補修にてそのまま継続使用することが可能であり、躯体そのものの老朽化対策は想定しにくい。約50年経過している単独処理浄化槽が継続稼働しているケースもあることから、30年経過したからといって全基更新するには巨額な投資が必要であり経営を圧迫する要因となるため、健全な経営を目指していくには本体の異常を発見した場合の対応が望ましいと考えられる。
全体総括
長井市では、公共下水道事業及び農業集落排水事業の面的整備は一部を残しほぼ完了しており、その区域以外を環境省の循環型社会形成推進交付金を活用し市設置型浄化槽を整備していく。経営の健全化を推進するには、主な収益である使用料金改定を実施すべきだが、類似団体や他の下水道事業料金設定、また人槽あたりの実使用人員を考慮すると踏み切れない状況である。しかし、今後維持管理費用の単価改定やブロア等の一斉更新の必要性等があれば改定の検討をせざるを得ないと考える。現在、歳入の一部を一般会計からの繰入金(全体の約14%)に依存せざるを得ない状況であり、維持管理費の増加が即繰入金の増加に繋がるため、経費削減は必要ではあるものの、必要経費であるため最小限に留める努力が必要である。また省エネ型ブロワはCO2削減効果が大きいため引き続き導入し、環境省で推薦している単独浄化槽転換の啓発活動を推進しながら、国庫補助金において有利な補助率を継続獲得できるよう事業進捗管理を厳正に行っていく。