経営の健全性・効率性について
収益的収支比率については、市設置型浄化槽事業の継続に伴い使用料収入も伸びるが、それに伴い地方債も増加していくことから、比率とした場合降下傾向となる。また、維持管理費は使用料にて相殺するものとしており、事業開始から10年以上経過し修繕(主にブロア)が増加傾向にあるため率の低下に拍車をかけている。企業債残高対事業規模比率については、当市は人口規模の割には年間設置基数が多く事業継続による地方債の増加は避けられないため、平均値より割高な比率となっている。経費回収率については、料金収入はほぼ清掃保守点検等の委託費に見合う設定であるため100%には届いていないが、平均値よりは高い水準となっている。汚水処理原価については、平均値より低コストで処理できているが、今後設置基数の増加と共に単価の上昇も考えられるため注視していく必要がある。施設利用率については、高水準な利用率であり、適切な人槽算定が行われている裏付けと言える。しかし今後も人口減少が進んでいくものと考えられるため、引き続き使用人員に見合った人槽を算定する必要がある。補足として、ブロア等の附帯設備の耐用年数は8年程度のため、事業開始からの経過年数を考えれば今後も増加し随時修繕する必要がある。さらに清掃保守点検等に関しても、適正な放流水質の保持が必要であり、水質検査の結果不適正となった場合の対応も実施し、常に適正値の範囲内を目標とする。
老朽化の状況について
平成17年度から市設置型浄化槽事業を開始しているが、本体の耐用年数到来までまだ猶予があり、現状特段不具合はなく老朽化対策は講じていない。また、浄化槽本体がFRPで形成されており躯体そのものの改築・修繕による長寿命化は想定しにくい。反面、衝撃に強くはなく地震等が発生した影響により損傷や機能不全、漏水などが想定される。また地方債の償還期間を30年としており耐用年数と同等であることから、将来更新時期を迎えた際、さらなる投資が必要である。
全体総括
長井市では、公共下水道事業及び農業集落排水事業がすでに完了しているが、市設置型浄化槽事業は今後も継続する。経営の健全化を推進するには、主な収益である使用料金改定を実施すべきだが、近隣市町や他の下水道事業料金設定、また人槽あたりの実使用人員を考慮すると慎重な検討を要するが、維持管理費用の単価改定やブロア等の一斉更新等があれば改定を検討せざるを得ないと考える。現在、地方債の償還も含め一般会計からの繰入金に依存せざるを得ない状況であり、維持管理費の増加が即繰入金にリンクするため、できる限り維持管理費の削減を行っていかなければならない。また省エネ型ブロワ導入によるCO2削減効果が大きいため、引き続き国庫補助金において有利な補助率を継続獲得できるよう事業進捗管理を厳正に行っていく。