経営の健全性・効率性について
経常収支比率(①)は各年度とも100%以上で推移し、単年度の収支黒字を継続した健全経営を維持しているが、令和元年度決算においては、前年度比3.6ポイントの減少となっている。累積欠損金(②)は発生していないが、今後、給水人口の減少や節水意識の高まり等により、経常収益の主となる給水収益の減少傾向が続くと見込まれることから、健全経営維持のため、料金回収率の改善や料金収入確保策の検討など、より一層経営基盤の強化に取り組む必要がある。流動比率(③)は、継続して100%以上を維持しており、支払能力に問題はない。類似団体平均と比較して値が低いが、企業債の償還ピークとなる令和6年度以降、企業債償還額の減少に伴って徐々に回復する見込みとなっている。企業債残高対給水収益比率(④)は、大型事業に係る多額の費用を企業債で賄っているため、類似団体平均を大きく上回っており、料金収入の約10倍の企業債残高を抱えている。将来世代への過度な負担を避けるため、投資規模の妥当性を検証するなど、企業債の発行を抑制し企業債残高の縮小を図っていく必要がある。料金回収率(⑤)は100%を下回っている状態が続いており、給水に係る費用は給水収益のほか繰出金等他の収入で賄われている現状となっている。料金水準の見直しが必要と考えられるが、10㎥当たりの料金は、県内で最高料金となっていることもあり、平成18年の合併以降、料金改定がなされていない。また、供給原価(⑥)についても、類似団体平均を大きく上回っており、維持管理費の削減等の経営改善が必要となるが、費用全体のうち企業債支払利息、減価償却費、第三者委託などの固定費の割合が8割以上を占める中、経費削減にも限界がある。経費削減の取り組みは引き続き行っていくが、抜本的な収入構成(料金改定)の見直しを視野に入れなければならない時期に来ており、水道事業の投資における財源の均衡を図り、安全で安心な水道事業の持続可能な運営を確保するために、今後、公営企業として適正な料金水準を検討する必要がある。施設利用率(⑦)は、類似団体平均を上回って推移しており、現在のところ適正な施設規模、利用状況であると言えるが、有収率(⑧)は、類似団体平均を下回って推移しており、施設の稼働状況が収益に反映されていない状況である。配水管等の漏水が有収率低下の原因の一つと考えられるため、今後も計画的な管路更新や漏水調査等の対策を講じ、有収率の向上に努める。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率(①)と管路経年劣化率(②)は、類似団体平均と比較して低い状況で推移しているが、年々増加傾向にあることから、順次更新を進めるとともに適切な維持修繕等による長寿命化を図っていく。管路更新率(③)については、年度によって更新率にばらつきはあるが、補助事業等で財源を確保し、耐震性の低い管路や老朽化した管路を耐震管に布設替えするなど、計画的に整備を進めている。
全体総括
今後将来、人口減少等により給水収益の大幅な増加が見込めない一方、老朽化施設や老朽管の計画的な更新などといった支出の増加が避けられない状況となっており、水道経営を取り巻く環境はより厳しくなるものと考えられる。今後、安全で安心な水道事業の持続可能な運営を確保するためにも、有収率の向上に努めながら、公営企業として適正な料金水準の検討を進めるほか、補助事業の有効活用や資本費平準化債の活用、事業経営の効率化を図るなどし、経営基盤の強化に取り組んでいく。