経営の健全性・効率性について
収益的収支比率が62%程度であることから、経営にかかるすべての費用を下水道使用料で賄うことができず、一般会計からの繰入金を充てて経営を行っている。企業債残高対事業規模比率が平成30年度に上昇しているのは、企業会計移行に伴う打ち切り決算で使用料が11ヶ月分の計上となり分母が小さくなったことが原因である。経費回収率は93%程度であることから、汚水処理費や施設の維持管理費は使用料である程度賄うことができていると考える。汚水処理原価は施設の老朽化に伴う維持管理費の増加によって上昇傾向にある。類似団体に比べて低めに推移してきたが、平成28年度以降同程度の水準となっている。施設利用率は左記の数値に誤りがあり、平成28年度末時点で36.34%である。また、過去の数値においても誤計上があり、実際は33%から36%程度で推移している。接続世帯の増加に伴い徐々に改善されつつあり、農集区域の統合により平成29年度には50%程度となった。また今後も農集区域の統合が予定されているため上昇する予定である。水洗化率は面整備を完了したことで高水準に達している。未接続の世帯についても引き続き接続促進を図っていく。収益的収支比率が低く必ずしも健全な経営とは言えないが、類似団体に比べ経費回収率としては良好な数値となっており、水洗化率も高い水準である。
老朽化の状況について
市が所有する処理場である大和クリーンセンターは、平成5年の供用開始から20年以上を経過している。施設の老朽化に対応するため、平成27年度から平成30年度まで長寿命化及び耐震化工事を実施した。現在広域化の流れから流域下水道への統合を検討中である。管渠については、入替や更生はほとんど行っていないが、ストックマネジメント計画を平成28年度に策定し、平成29年度から老朽化したマンホール蓋の更新を実施している。
全体総括
現状では、料金収入により施設の維持管理経費はほぼ回収できているが、企業債償還に係る経費までは回収できていない状況である。農集区域の統廃合による効率化によって、一定の経営改善効果が見込まれるが、水洗化率は高水準に達しており、その後の大幅な改善は見込めない状況である。下水道事業は市民生活の根幹にかかわる社会インフラであり高額な投資を要するが、料金面では市民生活への影響が大きいことから値上げは困難である。なお、令和元年度より全事業公会計に移行し令和2年度中には経営戦略を改訂する予定である。今後持続的な下水道サービスを提供していくために、コスト意識を更に向上させ財政基盤の強化をしていくことが課題となる。