経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率について、使用料収入に加え、一般会計繰入金を投入しても100%に満たず、収益性が十分に確保されている状態とは言えません。使用料については、平成26年度に使用料改定を実施しましたが、単価は類似団体と比較しても安い水準にあり、使用料で賄えない費用を繰入金で補填する状況が続いています。④企業債残高対事業規模比率については、本事業区域内においては面整備がほぼ完了していることから、平成22年度をピークに減少傾向にあり、大規模更新期まではこの傾向が続くと考えられます。⑤経費回収率については、使用料単価が低いことに起因し、使用料収入が十分でないことから低い水準のまま移行しています。⑥汚水処理原価については、類似団体平均値と比較した場合の数値が極端に低く、一見効率的なように見えるものの、当事業は⑧水洗化率において96.51%と高い水準にあり、また人口の減少傾向が否めないため、有収水量の増加に繋がる要素を持ち合わせません。また、汚水処理費自体についても、本事業は流域関連下水道であるため、極端な費用の圧縮は考えられず、これ以上の指標の良化は見込めません。
老朽化の状況について
③管渠改善率について、本事業は供用開始から20年余りが経過したところですが、管路施設は法定耐用年数が長いことから、経年劣化による改修の必要性は認められず、実施していません。また、流域関連下水道であることから、処理場に係る電気、機械設備の更新も必要としていません。しかし、起伏の多い地理状況から、マンホールポンプ場を112箇所有しており、故障等不具合が発生する度に修理・交換等、必要に応じて随時対応していますが、今後一斉に更新時期を迎えるため、下水道事業全体を対象としたストックマネジメント計画の早期策定、実施が必要です。
全体総括
⑥汚水処理原価について、⑤経費回収率に影響する数値であるため、できる限り圧縮できるよう努めています。しかし、年間有収水量を増加できれば原価は下がりますが、当市の下水道普及率は97.89%、本事業の⑧水洗化率は96.51%と、全国平均をも大きく上回る数値であり、これ以上の使用料対象の捕捉は見込めません。汚水処理費の削減についても、汚水処理費の大部分を流域下水道維持管理費が占めているため、短期的に解決するのは難しいのが現状です。また、今後は管渠も含めた大量の施設更新時期の到来への備えも必要です。本市では、平成31年度から下水道事業全体で地方公営企業法の適用を受けることから、綿密な移行準備を行い、法適用後は、実情課題を反映した経営戦略を策定し、汚水私費の原則に則った適正な使用料の値上げも視野に入れて、経営の健全性及び効率性の確保に努めます。