経営の健全性・効率性について
本土から約1,000㎞という隔絶された離島であり、台風・塩害などの厳しい自然条件や、急峻な地形のため土壌や枯葉等の有機物がダムに流入するため原水の水質が悪く水質管理が難しい。また、父島・母島の1村2島という条件により施設整備などが2重に必要となるなど、小笠原村の簡易水道事業については非常に厳しい経営環境となっている。このような経営状況のなか、平成28年5月から続く少雨による渇水が1年近く続き、平成29年5月中旬のまとまった降雨により解消されたが、海水淡水化装置のリース料・燃料代等の渇水対策について約5千3百万もの費用が掛かったことで総費用が大幅に増加したことにより、90%前後で推移していた①収益的収支比率が75.19%まで下落した。同じく総費用の増加及び渇水による節水意識の向上による有収水量の減少により⑥給水原価についても800円近くまで大幅に増加、⑤料金回収率の数値も悪化している。また、父島・母島の浄水場については老朽化や津波対策のため高台移転や建替えを実施してきており、今後も④企業債残高対給水収益比率については上昇傾向が続くこととなる。一方、管路の維持管理が適切に行われていることにより、⑧有収率は前年度から約4ポイント低下したものの90%以上で推移している。また⑦施設利用率は平均値を若干下回るものの55%以上を推移しており、効率的な運営が行われていると考えられる。
老朽化の状況について
昭和43年6月の小笠原諸島返還による急激な人口増加に対し、良質な水を安定的に供給することを目的とし整備した浄水場、水源施設等の各施設については、建設から40年以上が経過し老朽化が著しいため、父島浄水場については津波浸水想定区域の指定による高台への移転工事を実施し、平成27年4月に新浄水場の供用を開始した。母島浄水場についても平成26年度から平成33年度の8か年をかけて、現在の浄水場用地を利用し、順次設備の更新・建替工事を実施している。管路の更新については平成29年度は更新がなかったため③管路更新率は0となっているが、今後も計画的に実施していく。
全体総括
平成23年に30年ぶりに発生した渇水については、平成28年から平成29年にかけて再度発生し、平成30年に入っても少雨傾向が続いており、渇水の頻度が高まっている。渇水対策に係る費用については大きな負担となり、各指標についても悪影響を及ぼしている。また、今後も母島浄水場の建替工事が続いており、返還当初に建設したダムの老朽化に伴う改良工事の検討がされており、地方債残高の増加は避けられない。このことから、平成29年10月に「小笠原村簡易水道事業経営戦略」を策定することにより、さらに効率的な経営を進めていくとともに、平成30年度において、一般会計からの繰入金削減と節水の推進効果を含めた料金改定の実施をしている。