経営の健全性・効率性について
本土から約1,000kmという隔絶された離島であり、台風・塩害などの厳しい自然条件や、急峻な地形のため土壌や枯葉等の有機物がダムに流入するため原水の水質が悪く水質管理が難しい。また、父島・母島の1村2島という条件により施設整備などが2重に必要となるなど、小笠原村の簡易水道事業については非常に厳しい経営環境となっている。このような経営状況のなか、父島・母島両島の浄水場移転・建替工事の村債借入に係る元利償還金の増加及び料金収入の減少により①収益的収支比率が年々悪化している。母島の浄水場整備は令和3年度で完了するが今後も地方債残高については増加していくこととなり、④企業債残高対給水収益比率も徐々に悪化していくことが予想される。近年の渇水による影響も収益減の要因の一つとなっている。償還金の増加と合わせて、平成23年度、平成28年度秋から平成29年5月、平成30年秋から平成31年4月までと近年頻発した渇水による経費の増加により、平成29年度以降⑥給水原価が上昇傾向にある。⑦施設利用率については渇水による節水や令和元年度においては台風による欠航と来島者の減から使用料が大幅に減少した。令和2年においては前年に比べ回復しているが、新型コロナウイルスの蔓延による乗船人数の制限、各種イベントの中止により、施設利用率は伸び悩んだ。一方、⑧有収率はほぼ横ばいで95%前後の高い数値で推移しており、今後も引き続き管路の適正な維持に努めていく。
老朽化の状況について
昭和43年6月の小笠原諸島返還による急激な人口増加に対し、良質な水を安定的に供給することを目的とし整備した浄水場、水源施設等の各施設については、建設から40年以上が経過し老朽化が著しいため、父島浄水場については津波浸水想定区域の指定による高台への移転工事を実施し、平成27年4月に新浄水場の供用を開始した。母島浄水場についても令和3年度で設備の更新工事が完了し、まもなく供用の開始がされるところである。③管路更新については令和元年度は更新を行った。今後も計画的に実施していく。
全体総括
ここ数年で頻発した渇水による対策費の増加、使用料の減少並びに令和2年度からの新型コロナウイルスの蔓延が、各指標の悪化の大きな要因となっている。完了予定の母島浄水場の建替工事、返還当初に建設したダムの老朽化に伴う改良工事が今後予定されているため、地方債残高の増加は避けられない。そのような状況に対し、平成29年10月に「小笠原村簡易水道事業経営戦略」を策定し、効率的な運営方針を決定した。加えて平成30年4月より基本料金を廃止し、節水努力が反映される約11%アップの料金改定を実施したことで、一般会計からの繰入金削減等、経営状況の改善を行った。さらに令和6年度より公営企業会計への完全移行をし、各種指標の可視化を行い、経営状況の見直しを行う予定である。