経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は大型宿泊施設の稼働もあり近年は100%前後で推移しているが、令和2年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により大型宿泊施設や観光施設の集客数が大幅に減少し、それに伴い料金収入が前年度に比べ15%近く減少している。収益が悪化する分経費を削減しなければならないが、今後は公営企業会計方式により、将来的に持続可能な経営状態にすることを目標に、財務指標による多角的な経営分析により経費削減に取り組みつつ、事業の広域連携等によるコストカットの実現可能性を模索したい。④企業債残高対給水収益比率は年々減少し、類似団体平均値を下回っているが、今後老朽化により施設改良や更新が見込まれているため、企業債により大規模な事業を実施した場合、再び増加に転じる可能性が高い。人口減少により給水収益も減少することから、管路や施設更新の必要性については将来的な財政見通しを推計したうえで慎重に判断したい。⑤料金回収率は、類似団体平均値より大きく向上しているが、これは主に大型宿泊施設の稼働が大きく寄与しているものと考えられる。今後も引き続き経費節減に努めていくとともに、適正な水道料金の原価設定を検討していく必要がある。⑥給水原価は類似団体平均並みとなっている。令和3年度より公営企業会計による事業経営を行っているため、これにより経営・資産状況の見える化を図り、適切な原価計算に基づく料金水準の設定が行えるよう検討していきたい。⑦施設利用率は、類似団体に比べ低い割合で推移している。施設設置当時に比べ人口が減少していることが原因と考えられるため、コストカットの側面からも人口規模に適した施設等のダウンサイジングを検討していく必要がある。⑧有収率にあっては前年度を大きく下回った。冬期間の水道管破裂による漏水が多発したことが要因の一つと考えられるが、今後も減少要因を特定し収益の向上に繋げていく。
老朽化の状況について
管路更新率は、管路の新設や大規模な更新改良を行ってきていないため、類似団体の平均値に比べ低水準にある。長期計画の中で古い施設等から更新を予定しており、今後順次取り組んでいく計画である。事業の経営状況と施設等の更新の必要性を天秤にかけながら、将来負担を最小限にとどめるよう施設等の更新を行っていきたい。
全体総括
中山間地のため集落が分散しており、簡易水道施設も地形的な条件から集落毎に設置せざるを得ない状況にある。また、大型宿泊施設の稼働により、収益的収支比率が上がり料金単価は下がってきてはいるものの、過疎化により人口減少が進んでいるため、単位給水世帯あたりの潜在的な料金単価は高い状況にある。1施設当たりの給水人口が少なく原水の多くを表流水に頼っているため、イニシャルコスト・ランニングコストともに高い。公債費は、ある程度償還が進んだため公債費負担率は減少しているが、今後老朽化した管路や施設の更新が必要となるため、今の状況を楽観視はできない。公営企業会計による適切な原価設定による定期的な料金改定を検討し、自主財源の確保を図りつつ、経費削減等により経営改善を行っていく必要がある。