地域において担っている役割
尾鷲総合病院は、人口減少が続く東紀州地域の中核病院として、また紀北地区唯一の公立病院として、・365日24時間体制での救急患者の受け入れ・民間病院では不採算となる小児・周産期医療の提供・アンギオやMRIなどを活用した高度医療の提供・災害拠点病院としての受け入れ体制の構築などを行っており、地域医療の中心として住民の健康を支えています。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、H26以後は類似病院平均値を上回っており、またH28は経常損益が黒字となりましたが、これは経営安定化のための繰入れが増額されたためであり、その分を除くと経常赤字となり、経営状況は依然として厳しいものとなりました。病院の本業を示す医業収支比率は、類似病院平均値及び全国平均を上回っており、医業収益で医業費用の95%以上を賄っています。病床利用率は、類似病院平均値を上回っていますが、漸減傾向にあり、入院収益が減となっています。患者1人1日当たり収益は、外来は類似病院平均値を約4000円上回っているものの、入院は約14000円下回っており、今後は入院収益が増となる対策が必要となります。
老朽化の状況について
尾鷲総合病院の資産のうち、昭和44年に完成した外来棟は47年以上が経過し、また平成8年に完成した入院棟は20年以上が経過しているため、年々資産価値が減少しています。有形固定資産減価償却率は類似病院病院平均値を約23ポイント上回るなど、全体的に老朽化が進んでいることがわかります。また、機械備品減価償却率についても経営状況が厳しいことから、老朽化した機械備品を更新よりも修繕で対応することが多く、類似病院平均値より約14ポイント上回っています。1床当たり有形固定資産は、過去5年間はほぼ同額となっていますが、類似病院平均値が年々上昇しているため、他病院より投資額は抑えられているといえます。
全体総括
H28決算における尾鷲総合病院の経営に係る各指標は、類似病院平均値を上回っているものが多く、概ね良好と言えます。ただし、経常収支比率については、一般会計から経営安定化のための基準外繰入金が含まれているためであり、その分を除くと100%を下回ります。また、医療圏人口の減少などにより病床利用率が年々減少傾向にあることや、入院患者1人1日当たり収益が類似病院平均値の約2/3の収益となっていることから、今後、本業である医業収益が減となることが見込まれ、新公立病院改革プランに基づく取組みが重要となってきます。現有資産については各指標からもわかるとおり、全体的に老朽化が進んでいることから、今後、更新が必要な医療機械等が増えることが予想されるため、財政状況が厳しい中でも計画的に更新していく必要があります。