地域において担っている役割
公的医療機関として、一般診療はもとより、救急、精神、感染症などの不採算部門に関わる医療を提供している。特にも感染症医療は、県内で唯一、第一種感染症指定医療機関の指定を、新型コロナウイルス感染症対応は、重点医療機関の指定を受けており、医療圏の中でも積極的に新型コロナウイルス感染症患者の入院受入れを担っている。また、各種健康診査の実施、医師・看護師等による地域医療活動への従事等、地域の保健衛生の向上に積極的に貢献している。
経営の健全性・効率性について
新型コロナウイルス感染症対応として、一般病床180床のうち60床をコロナ専用病床(空床化)とした運営を通年を通して行った。そのため、医業収益が前年比174百万円減(5.2%減)となった一方、コロナ関連補助金等の交付により医業外収益の割合が大きくなり、事業収益総額では、205百万円増(4.0%増)となった。結果として、医業収支比率及び病床利用率は減、経常収支比率及び職員給与費対医業収益比率は増となったものである。当面、コロナの感染拡大・収束状況に応じた体制が求められることが予想されるが、ポストコロナを見据え、経費削減、収益確保に努めていく。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については、帳簿価格の7割強を平成10年度に建設した建物本館が占めており、耐用年数の半分を経過した時期に来ている。計画的な施設更新等に着手するため、まずは、老朽度調査を実施し、その調査結果等に基づく施設更新計画を策定する必要がある。器械備品減価償却率については、令和2年度にコロナ関連補助金を活用し、大幅な医療機器の整備を行ったことから帳簿原価が増となり償却率が大幅に減となったが、当該機器の償却開始に伴い、前年比0.7ポイントの増となったものである。
全体総括
平成19年の地方公営企業法全部適用後、4次にわたる経営改善計画を策定しながら病院改革を進め、着実に診療体制の強化、患者数の増加、赤字幅の圧縮を実現してきたが、令和3年度は、新型コロナウイルス感染症対応に伴う専用病床の確保体制を通年で行ったことにより経営的に特異な結果となった。特にも、介護施設等で感染した高齢者の受入れが増加し、負担が増えた感染病棟の看護体制を維持するため、一般病棟からの人員補充で対応している。結果的に、人員不足となった一般病棟の入院制限、入院収益減という状況が顕著となったものである。公立病院として地域医療圏において求められる医療を提供する使命を持つが、今後も感染症対応と並行して、経営基盤の強化に努めていく。