地域において担っている役割
当院は長崎県県南医療圏の急性期医療を担う地域の中核病院として急性期全般の高度専門的な医療を提供するほか、地域医療支援病院をはじめ地域がん診療連携拠点病院、高次脳卒中センター、災害医療等の機能を担っている。また、地域の医療福祉機関との症例検討会や公開セミナーの開催等による情報発信に取り組み、地域の健康増進に貢献している。
経営の健全性・効率性について
入院患者1人1日当たり収益は若干減少したものの、昨年度一時不在となっていた泌尿器科医師の確保及び放射線科医師の1名増員により、患者数及び外来患者1人1日当たり収益は大きく増加し、それにより、経常収支比率、医業収支比率、病床利用率も昨年度と比べて大きな改善がみられる。ただし、収益の増に伴う材料費の増や、昨年度更新したMRI等医療機器に係る減価償却費の増などにより、平成29年度決算において累積欠損金比率が5%の増となっている。材料費については前述のとおり収益の増に伴い増加しており、材料費対医業収益比率についてもほぼ横ばいで推移しているものの若干の増となっているため、在庫管理のシステム化や適正在庫の再検討などを行うなど、材料費削減のための取り組みを計画・実施していく必要がある。
老朽化の状況について
当院は平成13年度に建築されており、平成29年度で15年が経過する。本館建設時に併せて整備された附属設備等については耐用年数経過満了となる。有形固定資産減価償却率でみても、経年増加傾向にあり、類似病院平均値を上回っていることから設備の老朽化が進んでいると判断できる。今後、設備の不具合・故障等が増加することが予想され、安全面での問題にもつながる恐れがあるため、施設・設備の状況等を調査・把握し、緊急性の高いものから更新を検討していく必要があるが、減価償却費等の増にも繋がるため、経営状況との調整を図りながら計画的に実施していく必要があると考える。器械備品については、平成26年度以降ほぼ横ばいで推移しているものの、類似病院平均値を上回っているため、同様に計画的な更新の必要がある。
全体総括
医師の確保・増員等により経営状況は昨年度より大きく改善したものの、費用の増加や施設・設備の老朽化など改善すべき問題は多い。収益については現在の水準を維持・向上に努めるとともに、費用については施設・設備の更新等にかかる費用の増加が見込まれる中で、より一層の削減に取り組んでいく必要があると考える。引き続き、医師の確保対策を図るとともに、地域医療連携による紹介患者数の確保、各病棟間の柔軟な受け入れによる救急患者の確保など収益の確保を図ると同時に、経費削減を図りながら、積極的に経営改善に取り組んでいく。