地域において担っている役割
当院は常滑市唯一の入院施設を持つ病院として、急性期患者に対応するため急性期医療の提供を続けている。経営改善策として、当院が経営戦略の柱の一つとして位置づける「婦人科治療棟」建設事業について令和3年4月に実施設計に着手し、予定通り令和4年4月末に建物が竣工し、6月から外来診療が開始された。合わせて婦人科医師の体制も充実し、今後ますます当院経営をけん引する診療科の一つとして成長が見込まれる。また、国内4番目となる特定感染症指定医療機関の指定を受け、未知の感染症の蔓延を水際で防ぐ役割を担っており、新型コロナウイルス感染症対応についても、重点医療機関として医療圏域内の中核的な役割を担っている。さらに、平成29年度から病院事業として訪問看護ステーションを運営しており、病院から在宅へスムーズに移行できるよう、地域包括ケアシステムの中核としての役割を果たしている。
経営の健全性・効率性について
①経常収支比率について、依然として新型コロナウイルス感染症に係る医業収益の減少がある一方、前年度同様、国・県補助金等の収入により前年度より上昇した。③累積欠損金比率については、旧病院解体関係費に係る特別損失が発生していることにより他の類似病院平均値より高くなっている。④病床利用率について、病床調整会議による病床コントロールを行っていることから、類似病院平均値より高い傾向にあったが、令和3年度は令和2年度に引き続き新型コロナ患者の受け入れ態勢をとったことから類似病院平均値と同等の利用率となっている。また、入院会計を平成31年4月から直営に切替えたことにより、診療報酬改定の対応及び診療報酬請求の精度が上がったこと、DPCの導入(平成30年度から)及び病診連携の推進により、⑤入院患者1人1日当たり収益及び⑥外来患者1人1日当たり収益は増加した。⑦職員給与費対医業収益比率について、令和2年度に引き続き新型コロナウイルス感染症に対応するための手当を支給しているが、医業収益の回復により令和2年度に比べて低くなっている。⑧材料費対医業収益比率は、積極的な値引き交渉により、類似病院平均値と比較し低い傾向にある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率について、新病院建設(平成26年度)により、類似病院平均値よりも低い結果となっている。②器械備品減価償却率については、新病院建設から6年を経過し、当時購入した医療機器が対応年数を迎えているため上昇してきたが、令和3年度は一部機器の買い替えにより低い結果となっている。また、③1床当たり有形固定資産については、平成28年度決算で新病院移転時に不用となった有形固定資産を除却したため、類似病院平均値より低いレベルになっており、令和2年度は新型コロナ対応のための医療機器整備に伴い増加した。令和3年度は婦人科治療棟での治療開始に向けて医療機器を整備したことに伴い増加した。
全体総括
前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れに係る病床確保のため、医業収益は減少した。一方、新型コロナウイルス感染症関係補助金の受入により、令和3年度における経常収支比率は100%を超えている。令和4年度末に策定する経営強化プランにおいては、アフターコロナを見据えた経営改善に係る目標数値を設定しており、今後も常勤医師の確保や診療報酬加算の積極的な取得、病診連携による患者数の回復、病床稼働率の向上といった取組を着実に実施することで医業収益の増加を図り、医療圏域内における感染症対応の中核的役割を引き続き担っていく。また、令和7年度に予定する半田病院との経営統合に向けて、両病院の機能分担及び連携協議を進め、円滑な地方独立行政法人化を目指していく。