地域において担っている役割
公的医療機関として,一般診療はもとより,救急,精神,感染症などの不採算部門に関わる医療を提供している。特にも感染症医療は,県内で唯一,第一種感染症指定医療機関の指定を受けており,地域の中核病院としての役割を担っている。また,各種健康診査の実施,医師・看護師等による地域医療活動への従事,看護をはじめとする各種実習生の受入れ等,地域の保健衛生の向上に積極的に貢献している。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率及び医業収支比率については,概ね類似病院平均値を上回っており,前年比でも増となっている。これは,入院収益を中心に事業収益の伸び(7.4%増)によるものであるが,主な要因としては泌尿器科の開設(H29.1月)が挙げられる。手術件数では,泌尿器科の197件増を含め全科で33%増を記録し,病床利用率,入院患者1人1日当たり収益の増に繋がる形となった。なお,病床利用率,入院・外来患者1人1日当たり収益は,平均値を下回っているが,不採算部門の精神科を抱えていることと,診療単価が平均的に低い内科系診療科の占める割合が高いことが要因である。また,累積欠損金比率は収益増に連動して減となっているものの,累積額の圧縮には至っておらず,75.1億の累積額解消に向けた取組が求められている。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率及び機械備品減価償却率が平成26年度に大幅に上昇している。これは,新会計基準の適用により「みなし償却」が廃止されたことによるものであり,減価償却累計額が増加(有形固定資産+50.6億円)したためである。有形固定資産減価償却率については,帳簿価格の7割強を平成10年度に建設した建物本館が占めており,耐用年数の半分を経過した時期に来ていることから,長寿命化計画に基づく中長期的な施設の更新等を検討する必要がある。
全体総括
平成19年4月から地方公営企業法の全部適用に移行し,3次にわたる経営改善計画を策定しながら病院改革を進めてきた。その結果,着実に診療体制の強化,患者数の増加,赤字幅の圧縮を実現してきたが,74億円の累積欠損金の圧縮・解消には至っていない。平成29年度は,消化器・栄養センターの設立による消化器内科・外科の連携強化,常勤医3名の確保などで収支改善を図り,経常利益の発生を実現できたが,純損益では△16百万となった。公立病院として地域医療圏において求められる医療を提供しつつ,持続可能な健全経営を実現するためにも,まずは単年度の収支均衡を図り,累積欠損金の解消に努めていく。