地域において担っている役割
公的医療機関として,一般診療はもとより,救急,精神,感染症などの不採算部門に関わる医療を提供している。特にも感染症医療は,県内で唯一,第一種感染症指定医療機関の指定を受けており,地域の中核病院としての役割を担っている。また,各種健康診査の実施,医師・看護師等による地域医療活動への従事,看護をはじめとする各種実習生の受入れ等,地域の保健衛生の向上に積極的に貢献している。
経営の健全性・効率性について
新型コロナウイルス感染症対応として,一般病床180床のうち60床をコロナ専用病床(空床化)としたことにより,医業収益が前年比500百万円減(13.0%減)となった一方,コロナ関連補助金等の交付により医業外収益が大幅な増となり,事業収益総額では,700百万円増(15.6%増)となった。結果として,医業収支比率及び病床利用率は減,経常収支比率及び職員給与費対医業収益比率は増となったものである。当面,コロナの感染拡大・収束状況に応じた体制が求められることが予想されるが,ポストコロナを見据え,経費削減,収益確保に努めていく。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については,帳簿価格の7割強を平成10年度に建設した建物本館が占めており,耐用年数の半分を経過した時期に来ていることから,計画的な施設の更新等を検討する必要がある。器械備品減価償却率については,令和2年度にコロナ関連補助金を活用し,医療機器の整備を行ったことから帳簿原価が増となり償却率が減となった。なお,施設更新の計画策定に当たっては,建替え,長寿命化工事等の手法の検討に加え,地域医療構想における当院の役割,機能に則した施設のあり方を並行して検討することが求められる。
全体総括
平成19年4月から地方公営企業法の全部適用に移行し,3次にわたる経営改善計画を策定しながら病院改革を進めてきた。その結果,着実に診療体制の強化,患者数の増加,赤字幅の圧縮を実現してきたが,令和2年度に関しては,新型コロナウイルス感染症対応に伴う専用病床の確保により経営的に特異な結果となった。公立病院として地域医療圏において求められる医療を提供する使命を持つが,今後も感染症への対応などが求められる。その上で,持続可能な健全経営を実現するためにも,単年度の収支均衡を図り,経営基盤の強化に努めていく。